入試制度の公平性を破壊する英語スピーキングテスト(ESAT-J)
年が明けて本格的な受験シーズンが到来し、受験生や保護者は受験勉強のラストスパートに入っていることだろう。しかし、入試制度の大原則である「公平性」を破壊する事態が日本で着々と進んでいることをご存じだろうか?
2023年度から都立高校入試の合否判定に活用される英語スピーキングテスト(通称「ESAT-J」)。このテストをめぐっては様々な問題が発生しているのだが、「英語を話す力を伸ばすための入試制度改革の過程で、多少の不具合が生じている」と問題をすり替える報道が残念ながら多い。
だが、実態は全く違う。
この問題の本質は、「入試の公平性を担保できず、スピーキング強化という本来の目的も達成できないうえ、公共事業でありながら東京都が民間企業(ベネッセ)へ利益誘導しているかのように見える」ことである。
特に深刻なのは、本来は高校入試と無関係のテストを無理やり入試活用したために、不受験者(都外在住の都立高校志望者、等)が一定数必ず存在するにもかかわらず、不受験者の得点は「不受験者と英語学力検査の得点が同じ者の平均値」で算出される点。
これは受験生本人の試験結果で合否判定する入試の大原則から完全に逸脱し、もはや入試制度を根底から破壊していると言わざるを得ない。
*公平性や透明性の観点で深刻な問題は他にも10項目以上あり、詳細は筆者がtheletter「犬飼淳のニュースレター」で公開した「高校入試の「公平性」を破壊するESAT-J 問題の全体像」 https://juninukai.theletter.jp/posts/114a8220-704f-11ed-b2ce-119c3cd7a7ba (2022年11月30日)参照
今回の2023年度入試の対象は都立高校だが、日本最大の都道府県である東京都で実績をつくれば、民間企業のベネッセが他県への横展開を狙うのは必至。
つまり、東京都で食い止めることができなければ、今後は日本全国の公立高校受験生、保護者、教育関係者にも被害が及ぶほどの大問題へと発展していく可能性が高い。
こうした問題の本質について、事前に複数の反対団体が繰り返し記者会見を開き、警鐘を鳴らしたにもかかわらず、東京都教育委員会は昨年11月27日にテストを強行。結果、事前に危惧した通り入試の公平性を担保できない問題が続出し、SNSや反対団体調査にはトラブル報告が多数挙がっている。
それでも東京都教育委員会はひたすら問題から目を背ける(東京都に公式にトラブルを報告する手段をあえて用意しないことで「大きなトラブルは報告されていない」と強弁する、等)ことで、今もなお2023年度 都立高校入試への英語スピーキングテスト活用を強行しようとしているのだ。