試験監督が覚悟の実名告発

前置きが長くなったが、本記事では昨年12月9日の会見における試験監督本人による告発を通じて、英語スピーキングテストの異常性をお伝えする。

実名・顔出しで告発に臨んだのは予備校講師の吉田弘幸氏。同テストに反対する「入試改革を考える会」の一員でもあり、公平なテストを実施できない懸念を自ら確かめるために試験監督のアルバイトに応募。無事に採用され、当日に試験監督として業務を遂行し、想像以上に杜撰な試験運営を目の当たりにした。

吉田氏はアルバイトとはいえ守秘義務があるため、当初は東京都教育委員会が自ら問題を調査するのかを見守ったが、都はトラブル報告を受け付けないことでトラブルを無かったことにする姿勢を改めないため、守秘義務を解除する旨を都に伝えた上で告発へと踏み切った。

*吉田氏の告発は動画の7分8秒から約20分間
*外部配信サイト等で動画を再生できない場合は筆者のYoutubeチャンネル「犬飼淳」で視聴可能

「隣の教室の声がダダ漏れ」「不公平だ!」と受験生が大ブーイング。試験監督が実名告発する「英語スピーキングテスト」による東京都とベネッセの“入試破壊”_4
試験監督者である吉田弘幸氏(写真右)が実名告発を行った12月9日の記者会見。左側は入試改革を考える会の大内裕和氏
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以下、約20分間に及んだ吉田氏の告発の一部を抜粋・要約して紹介する。全てにおいて想像の斜め上をいく内容で、耳を疑うほど信じがたい実態が次々と明かされた。

<試験前の混乱>

・試験監督はほぼ全員がアルバイト。責任者と副責任者はおそらく運営会社グロップ(*)の社員だったが、手順を細かく把握していない様子で、あらゆる作業が場当たり的に指示され、高校入試として公平に実施する配慮は全く感じられなかった。

*グロップとは英語スピーキングテストの運営を担当した人材派遣企業。現在はベネッセのグループ会社ではないが、資本関係は残る

・責任者は集合時間に3分遅刻。さらに試験監督の出欠確認すらも手順が二転三転してスムーズに進まず、写真照合などの本人確認はついに行われなかった。結局、自己申告で名前を名乗って、名簿に名前があるかを確認するだけ。

・その後のタブレットやイヤホンなど資材の振りわけも大混乱。機材を入れる袋が足りない、資材の置き場所が指示と異なる、箱の外に書かれている内容と中身が異なる、など。

・マニュアルは事前配布されたが、当日は責任者から異なる手順を指示されたり、説明も聞く度に手順が変わったりで、試験監督は自分が何をやればいいのかすらも見通せなかった。