完成しなかった『ハウル』が残したもの
──映画『ONE PIECE THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島』(2005年)では、ハウルの経験が投影されたと聞きました。
自分が集めたチームへの未練が、そのまま出た作品です。ルフィたちの仲を裂こうとするオマツリ男爵は、仲間を失った自分のようで……。結局自分は経験を作品に映してしまう。ファンの方々には、面食らわせてしまったと思いますが……。
──細田監督作品に滲み出ている厳しさは、ご自身の経験に根付いているんですね。
『ハウル』は、人を信じられなくなった経験だったので……。自分の失敗としては『果てしなきスカーレット』(2025年)の爆死について思い浮かべる人も多そうですが、あれは完成しているからまだいい。自分の『ハウル』は完成しなかった。人生で一番の挫折です。
そういう人生で作品を作ってるわけだから、傷のない世界だけを描くことには抵抗がある。嘘をついているような気持ちになってしまうんだと思います。
──でも、その後、スタジオ地図を創業して、今がある。なぜ立ち上がれたのでしょうか。
僕をジブリに送り込んだ、東映の吉岡修さんの言葉が大きいと思います。吉岡さんは『太陽の王子 ホルスの大冒険』(1968年)で制作進行を務め、高畑勲さんや宮﨑さんとも仕事をしていた方でした。
『ハウル』の後、本気で業界を去ろうと思っていた時に、「引きずるな、前へ進むんだ」と言ってもらった。その言葉で、こういう昇華の仕方があるんだと思えました。
『ハウル』の時に思い描いた「時間のズレ」や「すれ違い」は、その後の『おジャ魔女どれみ』にも生きていて、『時をかける少女』(2006年)でひとつの形になった。そう考えると、あながち間違いではなかったのかもしれない。
ネット上での批判的な意見には、どう向き合っているのか
──監督は昔からネット上での批判的な意見も目にすることが多かったようですが、どのように向き合ってきたのでしょうか。
「見るわけがない!」と思いながら、いろんな意見を見てます(笑)。でも、あまり影響されないのかもしれないですね。
それは吉岡さんの言葉の影響で「前へ進むんだ」という気持ちが大きい。自分は褒められたくて作品を作っているわけではない。ネットの言葉で傷つく若い世代も多いと思いますけれど、怒りに身を任せない向き合い方がある。
──『果てしなきスカーレット』の「許せ」という言葉のようですね。
そうですね(笑)。僕は自分が経験したことを、どうしようもなく作品に投影してしまう。













