バックヤードの存在からブランドとして認知されるまで

そんなキンミヤが「ブランド」として意識的に育てられはじめたのは、平成14年前後のこと。当時のキンミヤは、居酒屋のバックヤードで使われる存在としての側面が強く、酎ハイやレモンハイのベースとして提供されることが多かった。そのため、「焼酎がどの銘柄なのか」を気にする客はほとんどいなかったという。

転機となったのは、関東のホッピーファンの声だ。「ホッピーと一番相性のいい焼酎はキンミヤ」。そんな評価が広がるにつれ、「今、飲んでいる一杯がキンミヤであること」をきちんと伝えようという動きが、宮﨑本店のなかにも生まれていく。

「テーブルワインのように、居酒屋のカウンターでもラベルが見える存在にしたいと考えました。ボトルや紙パックをテーブルに出してもらい、お客様自身に割っていただく“オンテーブル商材”として展開していったんです」

キンミヤのブルーのラベルは、居酒屋のテーブルの上でもよく映え、「何で割っているのか」を直感的に伝えていった。そしてこの戦略は、新型コロナウイルスの流行による営業制限という想定外の局面で、思わぬかたちで真価を発揮することになる。

飲食店が酒を提供できない期間が続くなか、消費の場は一気に家庭へと移ったのだ。

「居酒屋で見ていたキンミヤを、スーパーや酒屋で見つけて手に取ってくださる方が増えました。統一されたブルーのラベルが売り場でも目立ち、コロナ禍でも売上は落ちるどころか、紙パックの出荷数量は1.5倍まで伸びました」

キンミヤ焼酎 写真/著者撮影
キンミヤ焼酎 写真/著者撮影

もっとも、ブランド戦略だけで長く愛されることはない。キンミヤの根幹にあるのは、やはり味だ。鈴鹿山系の伏流水を地下から汲み上げ、仕込み水として使用しており、これがキンミヤの味を支える大きな要素になっている。

「甲類焼酎は基本的に原料アルコール+水で、使っているもの自体は他社さんと大きくは変わりません。アルコール25%であれば、そのうち約75%は水です。だからこそ、味を大きく左右するのは水だと考えています。水は人工的に再現できるものではなく、本当に自然からの恵みの賜物なんですよね」