「金太郎、美鈴と恋する。」(集英社文庫・コミック版3巻収録)
夜のお誘い「今夜、このまま連れて帰って寝てみるかな」
『サラリーマン金太郎』第25話は、これまでの企業ドラマの空気を一変させる回だ。営業配属して早々、金太郎の前に突然広がるのは“銀座の夜の世界”である。
新人営業として外回りを始めたその日、なぜか金太郎を名指しで1億円規模の案件が舞い込む。祝杯の流れで連れていかれたのが銀座のクラブ。上司の田中は「銀座で飲むのはサラリーマンの生活の一部よ!」と上機嫌だ。
そこで再会したのが、関東の総会屋を束ねるフィクサー・三田善吉。彼の“仕掛け”によって、金太郎は超一流クラブのママ・美鈴と出会うことになる。
さらに驚くのはここからだ。三田は、美鈴が「その気になる男を連れてくる」という賭けをしていたらしく、金太郎を半ば強引に差し出す。
すると、会って間もないにもかかわらず、美鈴はあっさりと言い放つ。
「今夜、このまま連れて帰って寝てみるかな」
まさかの急展開。こうして金太郎と美鈴の“夜の会合”が決定してしまう。なお当の金太郎は拒否こそしないものの、「俺……あまりうまくねえぜ」と妙に控えめなのが可笑しい。
銀座のクラブは今も特別な場所だが、1990年代当時はさらに別格の存在だった。政財界の要人や企業経営者が集う社交場であり、単なる飲み屋というより、人脈と情報が交差する大人の世界だったのである。
作中でも語られる通り、美鈴は政財界の大物と深く関わってきた女性。その彼女が一目見ただけで金太郎を“久しぶりのお相手”に選んだという点に、この回の面白さがある。
銀座という場所では、肩書きや金額以上に“人間そのもの”が見られることもある。初対面で一夜を共にするという大胆な展開も、単なる色恋というより、「この男は本物か」を見極めるための試験のようにも映る。
それでも金太郎は終始、「俺はヘタだって……」と繰り返す。いつも豪快で自信満々な彼が、珍しく戸惑いを見せるこのギャップもまた、第25話の大きな見どころだ。























