「金太郎、くいしばる。」(集英社文庫・コミック版7巻収録)
侮辱されても土下座を続ける金太郎
『サラリーマン金太郎』第70話では、金太郎が“喧嘩の強い男”ではなく、“会社のために頭を下げる男”として踏ん張る姿が印象に残る。
金崎興業への営業に向かった金太郎は、過去の因縁から頭に灰皿を投げつけられて流血する。さらに土下座まで強いられるが、金太郎は甘んじてそれに従う。
だが、金崎一家のいびりはそれでも終わらない。ついには来賓用の温かいお茶まで頭からかけられる。
それでも金太郎は黙って頭を下げ続ける。どれだけ屈辱を受けても、その場から逃げず、耐えながら仕事の話を続けるのだ。これまでの金太郎なら、そこでブチ切れてもおかしくない。だがこの回の金太郎は違う。怒りを飲み込み、サラリーマンとしてその場に踏みとどまる。
これに静かに声を上げ始めたのが、金太郎の部下で、喧嘩っぱやいことでお馴染みの早田だ。
「俺は34になっていまだに独身だ……。女がいねえわけじゃねえよ……。俺のポリシーなんだ。女房、子供かかえ、ローンまで組んじまって、てめえの生き様を生活で締め付けられたくねえんだ。殴りたいヤローをいつでも殴り飛ばす自由を持っていてえんだ」と。
自分の暮らしや守るものが増えるほど、人は簡単に意地を通せなくなる。だからこそ早田はここで、自分も一緒にすべてを捨てるのに付き合うから、目の前のムカつくヤローを殴ってしまおうぜと金太郎を誘う。
だが金太郎は、その言葉を聞いたあとでも土下座をやめず、仕事の話をひたすら続ける。まさにこれこそ、“サラリーマン金太郎”だ。会社員として自分を殺し、仕事を貫く。
金太郎のこの姿には、サラリーマンの美学と残酷さの両方がにじむ。ぜひ、この時の金太郎の目を、漫画で読んでほしい。























