「金太郎、勝利するが…。」(集英社文庫・コミック版2巻収録)

現実世界ともリンクする社長の解任劇

『サラリーマン金太郎』第21話では、大島社長の解任案が22対7で可決される。

怒号が飛び交う取締役会。役員たちが次々と立ち上がり、社長の解任に賛成する。漫画的な劇的展開に見えるが、これは決して絵空事ではない。

会社法上、代表取締役(いわゆる社長)は取締役会の決議によって選任され、そして解職もされる。つまり、法的には“役員の多数決で社長をクビにする”ことは可能だ。社長といえど、取締役の一人にすぎない。

実際、日本の大企業でもトップが取締役会で解任された例はある。2011年のオリンパス事件では、当時の社長マイケル・ウッドフォード氏が巨額損失隠しを問題視した直後に、取締役会によって解任された。

さらに2018年の日産自動車では、カルロス・ゴーン会長が逮捕された後、取締役会で代表取締役の解職が決議された。長年経営を主導してきたカリスマ経営者が、一夜にして経営の座から外れる展開は、日本中に衝撃を与えた。トップであっても、取締役会という機関の前では絶対ではないことを、改めて示した出来事だった。

では、取締役会で解任された社長は、その後どうなるのか。

まず押さえておきたいのは、「代表取締役の解職」と「取締役の解任」は別だという点だ。取締役会で代表権を外されても、取締役の地位そのものは残るケースがある。つまり“社長ではなくなる”だけで、役員として会社に残る可能性もある。

もっとも、現実の大企業ではそこまで単純ではない。

たとえばオリンパス事件では、ウッドフォード氏は解任後に会社を去り、後に企業を相手取って訴訟を起こした。日産のゴーン氏も、解職後に逮捕・起訴という展開をたどり、最終的には国外へ出国するという異例の事態にまで発展した。

トップの失脚は、単なる肩書きの変更では済まない。『サラリーマン金太郎』第21話でも、天下りで社長に就任していた大島社長は「覚えておけぇ! この屈辱は、日本中の官僚すべてが受けたと思っておくことだ!」と激しい言葉を残して去っていく。

会社とは、誰か一人のものではない。第21話は、社長解任という劇的な場面を通して、企業という組織の構造そのものを浮かび上がらせている。