「金太郎、大喧嘩する。」(集英社文庫・コミック版2巻収録)
「関東の総会屋を束ねるフィクサー」ってなに?
『サラリーマン金太郎』第20話では、屋上で殴り合う金太郎を止めようとする社員が、こう叫ぶ。
「その喧嘩絶対勝ち目はないぞ!」「関東の総会屋を束ねるフィクサー三田善三の子分だぞ。このままにして……それがどういうことになるか……」
この一言に、当時の社会の空気が凝縮されている。
まず「総会屋」とは何か。
総会屋とは、企業の株主総会に出席し、会社の不祥事や内部情報をネタに経営陣を脅し、利益供与を要求する存在のことを指す。高度経済成長期からバブル期にかけて実在し、多くの大企業がその対応に追われた。
企業側も総会を円滑に進めるため、裏で金銭を渡していた事例が発覚し、社会問題化。1997年の商法改正(現・会社法の前身)以降、総会屋への利益供与は厳しく処罰されるようになり、表立った活動は急速に姿を消していく。
では「フィクサー」とは何か。
フィクサーとは、正式な肩書きや役職を持たず、政財界の裏で人脈や情報力を駆使して物事を動かす人物を指す言葉だ。表舞台には出ないが、影響力は大きい。いわば“裏の調整役”である。
つまり、「関東の総会屋を束ねるフィクサー」とは、単なるチンピラの親玉ではない。企業、警察、政治といった世界にパイプを持つ存在という設定だ。
そしてその“子分”が金太郎の前に立っている。だから社員たちは青ざめている。
これは単なる社内のトラブルではない。相手を怒らせれば、会社全体が巻き込まれかねない一大事なのだ。
『サラリーマン金太郎』の連載がスタートした1990年代前半、当時はまだ、企業と反社会的勢力の距離が現在ほど明確に断たれていたとは言い難く、裏社会の影が経済界に落ちていたという。
「総会屋」「フィクサー」という言葉が象徴する、90年代日本のリアルが描かれている。いまでは日常語ではなくなったこれらの言葉。その重みを知ると、金太郎が殴り合っている相手の“危険度”が、よりはっきりと見えてくるだろう。























