この体力仕事を毎日続けられる理由は……

当然、すべて一から覚えるところからのスタートだった。

「天ぷらなどなにもかもやったことがなかったので、全部大変でした。意外と力仕事も多くて、この2年半くらいですごく体力もつきましたね」と振り返る。

一通りの仕事を自分ひとりで回せるようになるまで、およそ1年。最初の半年ほどは社長と一緒に仕事を覚えたが、人員の入れ替わりが続いたため、入店からおよそ半年で夜営業から“朝営業の担当”となり、そこからは一人で店を任される存在になった。

朝5時半に出勤し、開店の7時半までの準備を一人でこなす。火を入れ、出汁をとり、お弁当を仕込み、店を開け、その後も朝のお客さんをさばきつつ、午前10時頃にアルバイトの人が来るまで、約4~5時間は店内で一人。

常連さんに弁当を渡す長田さん
常連さんに弁当を渡す長田さん

12時が近づくと店は混み始め、12時台にはピークを迎える。ひっきりなしに人が出入りし、そばも弁当もどんどん売れていく。そのまま長田さんは、15時頃まで立ちっぱなしの勤務が続く。

月曜から金曜まで、平日はほぼ毎日同じ生活リズムだ。体調管理について聞くと「気合いです!」と一言。体感的にはこの生活に慣れは感じている一方で、金曜日の夜になると熱を出してしまうこともあるという。自分でも気づかないうちに、体力はギリギリまで削られている。

それでも続けられている理由を尋ねると、「前の職場よりも楽しい」と返ってきた。

事務職時代は、会う人が基本的に社内の人に限られていた。いまは、サラリーマンから現場仕事の人まで、さまざまな職種・年齢の客がカウンターの向こうに立つ。「いろんな人と話せるのが楽しい」と長田さんは口にする。

常連も多い。毎日来る顔なじみも数多くいて、昼と夜の両方に現れる人もいる。よく話す客もいる一方で、ほとんど言葉を交わさず淡々と通い続ける人もいる。言葉の有無にかかわらず、「今日も来てくれた」という事実が、長田さんのモチベーションにつながっている。