立ち食いそば屋なのに女性比率が高い

客層にも、この数年で変化が見えてきた。麹町という場所柄、サラリーマンが多いのはもちろんだが、女性客の姿も目立つようになっている。

「オープンしたては本当に男性ばかりだったんですけど、いまは女性おひとりの方も増えました。カウンターの中に女性がいると、入りやすくなるのかもしれません」

店の外から見ると、若い女性が1人で立ち食いそばを切り盛りしている風景は、たしかに印象的だ。実際にほかの立ち食いそば屋と比べても、女性客の比率は多いように感じた。

YouTubeでその姿が紹介されると、動画を見て訪れる客が一気に増えた。「公開された翌日から、『動画見ました』って言いながら来てくれる方がたくさんいました」と長田さん。画面越しに伝わった仕事ぶりが、実際の来店につながっている。

麴町の救世主となった築武士
麴町の救世主となった築武士

もちろん、経営環境は決して楽ではない。物価高や光熱費の高騰のなか、築武士でもオープン以来、2〜3回の値上げを行なってきた。それでも「手頃な価格」で提供できているのは、社長が築地との付き合いのなかで、食材をできるだけ安く仕入れる工夫を続けているからだという。安い日にまとめて仕入れるなどして、ぎりぎりのラインを保っている。

人気のマグロ漬け丼セット(900円)
人気のマグロ漬け丼セット(900円)
すべての画像を見る

そんな環境のなかで、26歳の若女将は、今日も5時半に店に入る。「自分の体力が続く限りは……!」と笑いながらも、朝からの仕込みと昼のピークを支えているのは、間違いなく彼女の存在だ。

その軽やかな言葉の裏にある覚悟と気力こそが、このオフィス街の忙しい毎日を支えている。

取材・文/ライター神山 撮影/平川友絵