車夫は週4日、DJ週4日で月の休みは0 

「人力車、いかがですか?最高の思い出を作りますよ!」

東京・浅草、雷門前。観光客でごった返す街の喧騒の中、軽快な声が響く。呼び込みをしているのは、155センチの小柄な女性・関森ありささん。

強靭な肉体美を誇る男性に混じり、大柄な男性客を人力車に乗せ浅草の街を走り抜ける姿に、思わず目を奪われる。彼女は女性には珍しい“人力車の車夫”だ。

そんな関森さんには、もう一つの顔がある。

「ラジオDJとしても活動をさせていただいてるんです。本当はアナウンサーになりたくて、大学生時代に100社以上テレビ局の面接を受けたのですが、全て面接で落ちてしまって。そんな時に今の会社からお声掛けをいただいたのが、パーソナリティーとなるきっかけでした」

なぜ、ラジオDJと人力車の車夫という異色の“二足のわらじ”を履くことになったのか。

「アナウンサーを目指して就活していた時に、トーク力を磨きたいと思っていた私に講師が『人力車の車夫をやってみたら?』と勧めてくれたんです。履歴書にも書けるし、挑戦してみようと思って始めたのが最初でした。すると、当時面接を受けたラジオ局・レインボータウンFMが“人力車の車夫を続けること”を条件に、採用してくれることになったんです」

インタビューに応じる関森ありささん。
インタビューに応じる関森ありささん。
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今でこそ副業OKの会社が多いものの、当時としては、副業を条件にする採用は異例だった。

「最初は悩みました。だけど、最初は研修でもろくに人力車を引くことができず、悔しい思いをしている中やっと引くことができたときだったので、もう少し車夫を続けてみたいとも思っていたんです。

人力車デビューした後も、声かけしてもなかなかお客様に乗っていただくことができず、『天下車屋』の社長に相談したら、『立ち止まってくださったお客様をトークで楽しませているか?』と指摘され、ハッとしました。乗ってほしいという自分の思いだけを一方通行で話すのはだめで、お客様を楽しませないといけない、自分自身も車夫としてまだまだ勉強したい、と気づいたんです」

以来、ラジオと人力車という2つの仕事を両立する日々が続いている。

週4日が車夫、週4日がラジオDJ。休みは月0日。それでも、「全くつらくない」と関森さんは笑顔を見せる。

「本当に、仕事をしているという感覚がないんです。今、人力車のほうは店長として若いスタッフの指導もしていて、学ぶ部分もあって楽しいんです。以前の私のようにアナウンサーを目指していたり、夢に向かって頑張っている子もいたり。自分も頑張ろうとエネルギーをもらえますね」