「最初は壊さないでほしかった」
――その数多の観戦歴の中で、印象に残っている試合は?
やっぱり1980年4月26日の初観戦です。角富士夫選手のサヨナラホームランという劇的な勝利を生で見たことをきっかけに、ヤクルトと神宮球場に夢中になりましたから。
あと印象的な試合で言うと、2002年の“ブンブン丸”池山隆寛選手の引退試合もスゴかった。当時は外野は自由席もあったので、スタンドはもちろんコンコースや通路にも人が溢れ、売り子さんも歩くのにひと苦労で、試合途中からは姿を消しました。後にも先にもあれほど観客でごった返した神宮球場は私の知る限りありません。
――プロ野球だけでなく、学生野球でも多くの名シーンを生んだ神宮球場。その魅力を教えてください。
たくさんありますが、ひとつは都会のど真ん中にある屋外球場であることです。周囲に(港区)青山の高層ビルやオシャレなお店があって、目と鼻の先には新宿と渋谷がある。
そんなエリアなのに球場に入れば、芝生のグリーンと座席のブルーという鮮やかなコントラストが目の前に広がって、夢の世界に迷い込んだ気分になるんです。
そんな空間で飲むビールが最高においしい(笑)。
――一部ファンからは“居酒屋神宮”なんて呼ばれていますね(笑)。そんな神宮球場の歴史を長谷川さんが徹底的に取材し、その壮大なストーリーをまとめたのが『神宮球場100年物語』。この本を書こうと思ったきっかけは?
ひとつはやはり再開発ですね。神宮外苑地区の再整備により新神宮球場の建設について都からの承認を得たというニュースが2015年にあって、そのときは正直何も思ってなくて。
それが2018年に具体的なスケジュールが出てきて、「意外ともうすぐだな」とちょっと焦ったんです。
――当時は再開発についてどう思ってましたか?
愛着があるから、単純に「壊さないでほしい」と思ってました。
それからしばらく経って、神宮球場がいずれ今と違う形になるなら「球場の歴史についてちゃんと調べてみよう」と思い、資料を集めるようになり……。「調べるからには本にしたいな」「本にするからにはちゃんと調べよう」と思ったことがスタートにはなります。