才能が才能を呼ぶスパイラル 

――ユニバーサル ミュージックは多種多様な才能溢れるアーティストが多数所属し、10年連続で売上高過去最高を更新するなど、業績も絶好調です。なぜ、次から次へと人気アーティストを発掘できるのでしょう?

藤倉(以下、同) 優秀な社員がたくさんいるからです、と言ってしまったらそれまでですが、組織的な話でいうと、マルチレーベル化したことが大きな要因だと考えています。弊社にはPolydor Records、EMI Records、UNIVERSAL SIGMAなど11のレーベルがあり、各レーベルのトップがアーティスト契約の決定権を持ってます。新卒以外の社員の採用権も同様です。

例えば、これらのすべて私が決めてしまうと、私の好みの人ばかりが集まってきてしまいますが、異なるリーダーの個性や考え方が反映されているので、幅広い人材発掘につながっているのだと思います。

現場時代は徳永英明やAI(アイ)などのヒット を手がけ、2014年1月に、当時46 歳の若さで社長に 抜擢された藤倉尚氏
現場時代は徳永英明やAI(アイ)などのヒット を手がけ、2014年1月に、当時46 歳の若さで社長に 抜擢された藤倉尚氏
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――活躍中のimaseさんは、TikTokに楽曲を投稿したらわずか1週間でユニバーサルから連絡がきたと聞きました。

そうしたスピード感もマルチレーベル化の効果といえるかもしれません。加えて、

Mrs. GREEN APPLEがヒットする、藤井風がヒットする、Adoがヒットするとなると「私もあんなふうになりたい」と才能が集まってきます。いい人は、いい人のところに集まってくるので、その意味ではいいスパイラルに入っていると思います。

――社長就任以降、10年連続で売上高過去最高を更新し、2023年には着任時の2.6倍の売上高を達成。変化の大きい音楽業界で成長するうえで、リーダーとして心がけていることを教えてください。

4つあるんですが、まずは“勝ち続ける”ことです。やはり結果が伴っていかないことには、アーティストも社員も幸せにならないですからね。

今では40代で社長に就任することは珍しくありませんが、私が46歳で就任した当時は前社長が60代、その前も60代でしたから、社内外で信頼を得るためにも勝ち続ける必要がありました。マーケットシェアの上昇、業績アップなど目に見える形で結果を出すことが大切だったんです。

2つ目は“変革し続ける”こと。よく「どうやったらヒットが作れるんですか」って聞かれるんですが、音楽業界にヒットの法則はないんです。音楽の流行りも常に変化していきますので、ヒットが出ているときも慢心せず、常に新しい才能を探して世の中に届けることを意識しています。