「アーティストは言葉の魔術師です」
――さきほど、各レーベルにそれぞれリーダーがおられるとうかがいましたが、藤倉さんから見て、結果が伴うリーダーの共通点はどこにあると思われますか?
さきほどお話しした“つながる”能力が高いように感じます。こちらが黙っていても「自分はこういう考えがあって、そのためにこれをやろうと思います」と伝えてくるんです。決定権がある立場にいても、上下や横のつながりを大切にしていて、要所要所でのコミュニケーションを蔑ろにすることがない。そうしたことが自然とできることは大事だと思います。
――つながったり、コミュニケーションをとるには、言語化能力も求められると思います。考えを言語化するうえで、何か意識してらっしゃることはありますか?
実は私が社長になった当時「藤倉くんは、考えていることや妄想はすごいが、言語化能力、論理的思考が足りない」と言われたことがありました。傷ついた一方で、たしかに思い当たる節もありました。
そこからは、自分に刺さった言葉をインプットして、それをどんどんアウトプットするように意識しました。
仕事柄、さまざまなアーティストや音楽業界のリーダーたちと話すことが多いのですが、「こんな言葉を使うんだ」と驚くことがあります。とくにアーティストは言葉の魔術師ですからね。そうした言葉や考え方をメモして、胸の中にとどめておくのでなく、どんどん吐き出していこうと。
――やや大きめな仕様のこのノートがお気に入りなんですか?
たぶん、最初に仕事ができそうな人がこれ使っているのを見て、「よし、自分も」と思ったんじゃないかな(笑)。それから使い続けていますが、今はこれじゃないとアイデアが浮かばないんです。
――アーティストやスタッフたちをその気にさせる藤倉さんの言葉は、ここから生まれているんですね。
いやいや、そんな大したものじゃないんです。ただ、言語化ということでいえば、初めは上手くできなくていいと思うんです。最初から完璧な言葉を発するのなんて無理ですからね。でも、積極的に何度も口にすることで、次第に無駄な枝葉が落ちていって、磨かれた言葉がキーワードとして残っていく。そんなふうに思っています。
(後編に続く)
取材・文/山田千穂 撮影/村上庄吾