「ああ」を入れると歌いやすくなる

実際に「ああ」というフレーズはどの程度の割合で校歌に使われているのだろうか。一例として、昨年夏に全国高等学校野球選手権大会(甲子園)に出場した高校の校歌の歌詞を確認してみると、全49校のうち13校、実に約26%の校歌に「ああ」が使用されていた。

校歌の歌詞に「ああ」が含まれている、昨夏の甲子園出場校一覧
校歌の歌詞に「ああ」が含まれている、昨夏の甲子園出場校一覧
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「“ああ”や“おお”というフレーズは、校歌ではよく使われる言葉のひとつですよ」と教えてくれたのは、校歌を中心に曲づくりを手がける大阪府の音楽制作会社「SHIOKAWA」で代表を務める男性(72)だ。校歌づくり約40年のベテランで、これまでに50曲以上の校歌制作に携わってきた。そもそも「ああ」とはどういう意味なのか、尋ねてみると……。

「人の感情を表す詠嘆の表現で、ありがたい感情とか、楽しかった思い出とか、そういう気持ちを表現するために入れられることが多いですね」(SHIOKAWA代表の男性、以下同)

そして、「ああ」が多用されるのにはこんな理由があった。

「リズム的な問題かな。『ああ』を入れると曲のリズムが整えやすいし、歌いやすくなる効果があるんです。これは作詞家の直感的な部分が大きい。『入れることで、その後の言葉がより引き立つな』とか『リズム的に落ち着くな』とか、そういう感覚的な理由で入れられていることが多いと思いますね」

作詞家の技術的、直感的な理由から歌詞で重宝される「ああ」。その他、校歌の歌詞といえば、山や川の名前などその学校のある土地の象徴や、学び舎や教室、といった学校生活の情景が浮かぶ単語が多く使われる。

※写真はイメージです
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「たとえば教室の窓から見える、校舎の裏側の山から日が登る様子や、下校時に歩いた河川敷の風景など、在学生や卒業生が校歌を歌って学校での日々を思い出せる歌詞が多いです。

そのため、作詞家は想像で歌詞を書くのではなく、学校の写真やビデオ、地図などを見て参考にしたり、実際にその学校に出向いて風景を確認したり、校長先生に話を聞いて歌詞にしています」

一方で、このような傾向があるとも。

「過去や沈みゆくものを連想させる言葉はあまり好まれません。例えば、夕日。同じ太陽なら、将来や未来をイメージさせる朝日を使うことが一般的ですね」