カセットテープに代わる画期的なオーディオとして誕生
四角いクリアなケースからのぞく、小さなCDのような円盤。それがMDです。手のひらサイズのプレーヤーにイヤホンをつけ、歩きながらロック、渋谷系、ダンスミュージックを楽しんでいた方もいるでしょう。
MDは1990年代の日本の音楽文化を支えたメディアでしたが、2025年2月末、ついにソニーによる生産が終了しました。SNSではMD文化の終了や当時を懐かしむ声など、さまざまなコメントがポストされ、日本人の記憶の中にMDが色濃く根付いていたことがわかります。
筆者自身、当時のMDウォークマンや、MD付きカーステレオにはお世話になりました。ラジオをエアチェックしてまとめた自分だけのJ-POPベスト集を鳴らしながら、失恋を悔やみ、泣きながらウイスキーのボトルをラッパ飲みしつつ、シャ乱Qの『ズルい女』を絶唱する友達を助手席に乗せ、首都高を何周もしましたっけ...。あれは控えめにいって地獄だったなあ。
いまや音楽といえばスマートフォンで聴く時代ですが、MDは当時の私たちにとってどんな存在だったのか、振り返ってみましょう。
MDが生まれたのは1992年。再生・録音が可能なメディア&プレーヤー/レコーダーとして登場しました。規格を制定したソニーの目的は“カセットテープに代わる次世代オーディオ”。というのもカセットテープには、キュルキュルっとテープを早回しor巻き戻ししなければ頭出しできないという、大きな欠点があったんですね。
なおCDが登場したのは1982年。以後CDは、カセットテープと同じように収録曲の頭出しが面倒だったLPレコードから、世界中で市場を一気に奪い取っていきました。今すぐ聞きたい曲をボタン1つで呼び出して、秒で再生できるデジタルオーディオの技術。
音質面で比較すると劣る部分はあれど、音楽をアナログからデジタルにすることでのメリットが強く求められた時代。同様の扱いやすさを持つMDも、デファクトスタンダードな音楽メディアになるだろう。と誰もが感じていたでしょう。