ロジャー・クレメンスの風格
最後に、僕が最近気にかけていることというか、興味を持っているテーマについて書きたいと思います。はたしてそれが、これからメジャーを目指す人たちの参考になるかどうかはわかりませんが……。
僕が最近興味を持っていること。それは、ピッチャーが醸しだす「風格」のことです。
かつて、マウンドに立つロジャー・クレメンス(現トロント・ブルージェイズ)の、えも言われぬ「風格」について述べたことがあると思います。彼は、マウンド上で特別なパフォーマンスをするわけでもないのに、いつも堂々としていて、つい見とれてしまうような独特の雰囲気を持ったピッチャー。僕の憧れの選手と言っても過言ではありません。
その彼が、どうしてあそこまでの「風格」をたたえているのか、僕は時々考えるんです。
これはマダックスやランディ・ジョンソン(マリナーズ)にも言えることですが、メジャー・リーグの中でも不思議なオーラを発するピッチャーが何人かいます。
いったい何なんでしょうか、あの周囲を圧倒する「風格」の正体は……。
もちろん、答えがそんな簡単に見つけられるはずはありません。また、僕がクレメンスやマダックスのようになりたいと思っても、どうやったらなれるのか見当もつきません。
ただ僕は、心の中でおぼろげながら、こう思っています。ピッチャーとは本来、そういうものなのではないかと。いや、そうあるべきなのではないかと。
グラウンドの一番高いところに立って、観客の視線と期待を一身に浴び、その中で相手打線に戦いを挑んでいく孤高の存在。打たれれば、ただひとりグラウンドを去っていかなければならない代わりに、抑えた時にはチームメートからの信頼と尊敬と、観客からの賞賛を独り占めできる存在。それがピッチャーというものなんだと思います。
そしてクレメンスやマダックスやジョンソンは、そういったプレッシャーの中で常に素晴らしい仕事をすることでエースと呼ばれ、見るものの期待に応え続けることで主役としての「風格」を備えていったのだと。
モノクロ写真/書籍 『ドジャー・ブルーの風』より
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