急遽放送の制作の裏側とは…

この回は、世帯平均視聴率8.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、今年最高を記録した。ここ数年の平均は4~6%ほどであるため、TARAKOさんの訃報を聞いた多くの人が、『ちびまる子ちゃん』を視聴したことがわかる。

今回のさくら家の家族愛あふれるこのエピソードは、SNSなどで〈今回のまる子は本当に神回過ぎて泣きました…〉〈後半ぼろぼろに泣きながら見てた 特にひろしとおばあちゃんのところ〉〈ちびまる子ちゃんで泣きそうになる日が来るとは…… ひろしとおばあちゃんが「お互い歳をとった」って話されてたけど視聴者の我々も、だよね〉〈ひろしとおばあちゃんの2ショット貴重だな〉と感動の声があがり、多くの人が改めて『ちびまる子ちゃん』の素晴らしさを感じていた。

脚本を担当したのは、脚本家の髙橋幹子さんで、『ちびまる子ちゃん』のほか、『おじゃる丸』や『青のオーケストラ』(NHK Eテレ)、現在放映中の連続ドラマ『Sugar Sugar Honey』(TOKYO MX)『瓜を破る~一線を越えた、その先には』(TBS系)などの脚本を手掛けている。

長年『ちびまる子ちゃん』に携わってきた髙橋さんに、『おばあちゃんの誕生日』を書いた当時のことを聞いた。

「歳を重ねると『自分はもう世の中から必要とされていない……』と思うこともあるじゃないですか。
私もそうで、世の中、20代の若者だけでいいんじゃないか、とつい卑屈な気持ちになってしまうんです。でも、本当はどの年代からも学ぶことがあるんじゃないかと。

おばあちゃんからも、小学生のまるちゃんからも、それこそ生まれたての0歳児からも。テーマは『幾つになっても誰もが必要とされる当たり前の世界を』。だからこのお話では“見えないもの”を互いにプレゼントしあいました。まるちゃんは、おばあちゃんから“優しさ”を。おばあちゃんは、まるちゃんたちから“想像力”を。世代の違う二人じゃなきゃ、交換できないプレゼントです。

以前、私の母が大切にしていた空の菓子箱を開けたところ、自分が昔あげた誕生日プレゼントや手紙、お土産のみならず、その空箱までもが一つひとつ日付入りで大事にしまっていたことに胸打たれたのを思い出し、この誕生日話の"肝の部分"に入れました」

©さくらプロダクション/日本アニメーション
©さくらプロダクション/日本アニメーション

SNS上でも特に感動の声があがった、ひろしとこたけの何気ない会話も、工夫がたっぷりこらされていたようだ。

「『台詞は少なく、情景描写で見せる』ことを意識しました。私は、生まれた土地にずっと住み続けている人に憧れているのです。ひろしとおばあちゃんのように、毎年同じ景色をずっと隣で見られるというのは、奇跡だと思うのです。長年一緒にいるからこそ台詞は少なく、情景描写で魅せる。確か高木淳監督に『情景描写で見せましょう』と言われた記憶があります。監督には、打ち合わせの段階から、その画が"見えて"いたのでしょうね」