どうすればイスラエルの侵攻は終わるのか
――イスラエル軍の地上侵攻もはじまりましたが、今後の展開として落としどころはあるのでしょうか。
本気で落としどころがないんです。本当に冗談抜きで、しつこいようだけど、ない。イデオロギー抜きでイスラエル軍の動きだけを、ファクトとして見ると、まずガザ北部はほぼ真っ平になりました。南部もハンユニスという大きな街を包囲しました。となると、もうガザに残されたのはほんのわずかで、そこに220万人のパレスチナ人がいます。その時点で、もう人道危機の極限状態ですよ。
そうなったときに、周辺国は難民の受け入れ準備をすることになるかと思いますが、仮にそうなると、パレスチナ人に戻る土地がなくなってしまいます。1回出てしまえば、絶対に戻れないですから。
そして、アラブ諸国としても、難民を受け入れること=第二のナクバ(アラビア語で「大厄災」。1948年のイスラエル建国により、パレスチナの地に住んでいたアラブ人が居住地を追われ、難民となったことを指す)に加担することになってしまうので、心情としても絶対にしたくないわけです。だから、まずはなんとか恒久的な停戦に合意をさせて、ハマスを抜きにしたパレスチナの統治機構をどうにか作っていくこと。答えはありませんが、まずその議論を始めない限りは、人が死に続けるしかないんです。
――いままでも、一旦は落ち着いても、またそれぞれに過激な指導者が出てきて衝突するということを繰り返していますよね。
そうなんですよね。だから、イスラエル側の立場で考えると「2度とイスラエルに手を出せないようにするしかない」「それが我々の自衛権なんだ」というのは、めっちゃわかるんですよ。
いまは、過剰防衛だ、完全に自衛権を逸脱していると言われていて、国際法上でも間違いなくそうなんですが、敵を殲滅しないと自分たちが生き残る道はないということが何千年の歴史で彼らのメンタリティに刷り込まれてしまっている。それはお互いの正義だから、もう交わらないんです。
ただ、不完全ではあれど、一応は第2次大戦以降に世界が作ってきた国際秩序というものがあるわけじゃないですか。力による現状変更はダメだよ、他国を侵略しちゃダメだよ、占領国は非占領国の人たちのウェルビーイング、生活権利を保障しなきゃダメなんだよという、ベーシックなところに立ち返って考えることしか、方法はないかなと思います。それができるのはやっぱりアメリカや国連だったりするわけですが、いかんせん、現状では全然ダメですね。