病院への爆撃はイスラム聖戦の誤爆か
この大ニュースは、世界中の大手メディアで報道された。日本の主要メディアもそれに続いた。
しかし、その後、イスラエル当局から異論が出た。イスラエル軍はそうした攻撃をしていないというのだ。当局はその証拠として、いくつかの画像と音声データを公開し、「イスラム聖戦(ハマスと連携してイスラエルと戦うもうひとつの武装組織。イラン工作機関と以前から密接な関係にある)が発射したロケット弾が途中で故障し、それが落下した」と主張した。
イスラエルから情報提供を受けたバイデン米大統領は、「イスラエルに責任はないようだ」と主張を認めた。『ニューヨーク・タイムズ』紙など欧米主要メディアによると、米情報機関は死者の数を100人から300人の間で下限(つまり100人)に近い数字と見ているという。病院の被害は軽微で、爆発は病院の中庭で起きており、そこに身を寄せ合っていた人々が被害に遭ったようだ。なお、ガザ保健当局は後に死者は471人と発表している。
イスラエル軍によるものではないだろうという米情報機関の分析は、偵察衛星の画像、米軍が衛星と航空機によるミサイル追跡で独自に収集している赤外線データ、民間人が撮影した映像、その他のデータに基づいているが、完全に何が起きたかはまだ把握しきれておらず、引き続き調査・検討を続けていくという。
つまり米情報機関は「爆発はイスラエルが主張するように、イスラム聖戦のロケット砲の故障による落下がもたらしたものだった可能性のほうが優勢とみているが、確証はまだない」「死者数はガザ保健当局の発表よりかなり少ない」と判断していることになる。
ただ、世界中の主要メディアが第一報で「ガザ地区の病院がイスラエル軍に空爆され、約500人死亡」と伝えた影響はきわめて大きかった。世界中のイスラム社会で、イスラエル批判の声がいっきに吹き上がったのだ。