これまでのイスラエルへの攻撃との相違点
10月7日にパレスチナ南部・ガザ地区を支配する政党・イスラム組織「ハマス」の軍事部門がイスラエルを奇襲し、1000人以上が死亡。対するイスラエル軍のガザ空爆で1500人以上の犠牲者が出ている。イスラエル軍は地上部隊を侵攻させてハマス掃討作戦を強行する構えで、今後さらに多数のガザ住民の被害が予想されるという悲劇的な状況になっている。
では、なぜハマスは今、このような攻撃を開始したのか。
ハマスがイスラエルを奇襲したこと自体は、初めてのことではなく、驚くことではない。ハマスはもともとイスラエルによる支配への抵抗を掲げる組織である。当初はイスラエルの存在自体を認めていなかったが、現在は少なくとも建前上は、1967年に第3次中東戦争で占領したエリア(現在のパレスチナ自治区)以外は、イスラエル領だと認めている。
しかし、実際には自治区でも広範囲に及ぶイスラエルの事実上の支配がいまだ続いているため、イスラエルへの攻撃はずっと継続してきた。したがって今回の攻撃自体は、その従来の姿勢の継続であり、特異なことではない。そのなかで注目点としては、ハマスが今回の攻撃を可能とするまで戦力を再建できていた、ということだ。
ハマスとイスラエル軍の前回の大規模戦闘は2021年5月。その際、イスラエル軍はガザ地区への空爆でハマスの軍事拠点、地下兵器工場、軍事用地下トンネルの多くを破壊した。ハマスはそれから2023年10月までの2年5か月で、数千発のロケット弾を製造し、多くの発射機を製造、兵士たちの携行兵器を調達し、奇襲に使う多くの地下トンネルを再建し、訓練所を建設し(襲撃後にハマスが発表した動画によれば最低6か所)、兵士の訓練を行った。
2021年の戦闘の前の大規模戦闘が2014年だったので、この戦闘の準備には7年をかけていたことに比べると、今回は短期間での戦力再建だといえる。