ハマス侵攻の2日後にイスラエル入り
――それから、すぐにイスラエル入りをしました。
10月7日が土曜日で、日曜日の便を取り、月曜の朝にはイスラエルに入りました。今年の夏も現地には行っていて、そのときは南部に拠点を置くイスラム聖戦の子供たちの軍事キャンプを取材するために、ガザにも入っていたんです。
僕は料理が趣味で、ガザに行くと寿司を握るんですよ。下水処理がしっかり整備されていないガザの近海は汚染されているので、そのぶん養殖が盛んなんです。いつも、大きな養殖場に併設されたレストランで寿司を振る舞っていましたが、そこも今回の空爆で跡形もなく破壊されてしまいました。養殖場や浄水処理場はひとつなくなるだけでも致命傷になる大切なインフラですが、それらがことごとくやられているというのが、本当に今回の特筆すべきところだと思います。
――イスラエス・パレスチナ問題は須賀川さんにとって戦場取材の原点と聞きました。
おっしゃる通りです。2019年3月に赴任して、4月に最初に行った紛争地がパレスチナ・ガザ。それから、ほぼ毎年行っています。
――これまで見てきたパレスチナの光景と、今回ではまったく違うものですか?
実はあまり変わっていなくて、それが恐怖でもあります。イスラエル側からは遠くでボンボンと空爆の煙が上がるのが見えるけど、レストランも営業していて普通の生活がある。その非対称がこれまでもずっと続いてきました。
ただ、唯一違うのが、今回はイスラエル側もものすごく多くの血を流したこと。これまでガザからどれだけロケット弾が飛んできても、アイアンドーム(イスラエルの防空システム)が迎撃をしてきたので、イスラエル国民に直接的な被害が加わることはあまりなかったんです。
一方、ヨルダン側西岸やガザはずっと痛みを感じてきました。当然、ハマスのやったことは完全に戦争犯罪で、民間人を狙ったことは許されませんが、彼らの感情としては、これまで占領下で抑圧されてきたことの延長戦なんですよね。