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人質奪還作戦の実働部隊

空爆と同時並行でイスラエル軍地上部隊の侵攻も始まったガザ情勢。今後は、戦車を中心とする陸軍部隊の軍事作戦と並行して、ガザ内部にある程度の情報網を持つ首相直属の情報機関「シンベト」(保安庁)とも連携しながら、軍の特殊部隊・情報機関も人質奪還やハマス幹部の殺害を進めていくことになる。

ガザとのイスラエル国境沿いをパトロールするイスラエル兵 写真/共同通信
ガザとのイスラエル国境沿いをパトロールするイスラエル兵 写真/共同通信
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すなわち、地下トンネルの出入り口とトンネル内部を探り、盗聴器を仕掛け、さまざまな種類の小型ドローンを飛ばし、武器集積所や作戦指揮所などのハマス軍事拠点を探り、ハマス戦闘員の捕虜を尋問し、鹵獲した敵のPCやスマホを解析する。そして、標的を発見すれば、空軍に空爆を要請、あるいは自分たちで突入する。もちろん人質がいれば奪還作戦を実行する。

こうした作戦に投入されるのが特殊部隊だが、イスラエル国防軍には対テロ作戦がきわめて重要なため、特殊部隊と情報機関が密接に連携する。特殊部隊自身にもある程度の情報活動が任される。

では、任務にあたる特殊部隊には、どんな部隊が存在するのか。

まず、対テロ・ゲリラ戦に特化した強力な部隊が「サイェレット・マトカル」(参謀本部偵察部隊)である。今回、ガザでの人質奪還作戦でも主に実働するのは、この部隊とみられる。組織上、軍の情報機関である「アマン」(軍事情報部)の隷下部隊だが、実際には参謀本部の指揮下にあり、冷戦時代から数々の対テロ作戦・人質奪還作戦に投入されてきた歴戦の特殊部隊だ。

彼ら自身も情報活動の訓練を受けているが、作戦にあたっては「アマン」(軍事情報部)隷下の他の部隊と連携することも多い。アマンは陸海空軍に所属しない独立した機関で、情報部隊として「ハマン」(情報部隊)、通信傍受・ハッキング担当の「8200部隊」、偵察衛星・偵察機・ドローンなどの画像情報担当の「9200部隊」があり、それらも作戦時にはサイェレット・マトカルを支援する。

なお、通信傍受の8200部隊はそのレベルの高さで知られる強力な情報機関だ。