「この人、正気かしら」

ニコラス・ケイジといえば浪費家で、結婚と離婚を繰り返すアップダウンの激しい“アブない人”のイメージがありますよね。

私も何度か通訳をしたことがありますが、来日時に、遊園地に置くような特大サイズのゴジラのフィギュアを買うのを見て「この人、正気かしら」と思ったことがあります(笑)。フランシス・フォード・コッポラ監督の兄が彼のお父さんで、大学教授だったそう。

天才として知られるフランシスが劣等感を抱くほど優秀な人だったと聞きました。

私が選ぶ彼の代表作はなんと言っても『リービング・ラスベガス』(1995)。あの映画はよかった! 落ちこぼれ、酒におぼれる男を彼は見事に演じていました。実は私は彼と一度、CMで共演をしたことがあるんです! 場面は記者会見の設定で、私は隣に座っているだけでしたけれど、「本番」と言われた途端にニックの目が据わるというか……。

それまで普通に私と楽しくおしゃべりしていたのに、パッと雰囲気を切り替える。本物の俳優さんとはこういうものか、と心底驚きました。『リービング・ラスベガス』は、そんな彼のお芝居のうまさを堪能できる作品です。