工藝産業の現場の課題
ここで、僕がこれまで工藝産業の現場に関わるなかで感じた、産業としての工藝の課題についていくつかふれておきたい。工藝に親しむうえで、絶対に知っておくべきかと聞かれれば、必ずしもそうではないと思う。
ただ、これらの課題は工藝の持つ魅力やそこに宿る価値観とも直結しており、何より工藝のこれから=未来を開くうえでは、避けて通れない問題だと考えている。
(1)業界構造の変化
いま伝統工藝品を作り出す現場は一つの産業として大きな課題に直面している。個々の就労者が工藝品づくり一本で食べていくには、厳しい環境といわざるを得ないだろう。
さらに、需要の低迷などの影響は、工藝産業の構造そのものにも変化をもたらしてきた。かつて工藝が産業として、より勢いを持っていたころは、各地域にあった産地問屋が企画・製造リスクを負担し、そうして生まれた工藝品を小売店が買取販売することで、在庫リスクを負担することも多かったという。
しかし時代の変化により、問屋もそうしたリスクを取り続けることが難しくなってきたのだ。作り手・買い手双方をつなぐ、工藝品の安定的な仕入・販売を担ってきた場としては、機能低下といってもいい状況が進んでいる。
結果、こうした取引相手からの受注減に対応すべく、職人さんたちの中には自らネットショップを立ち上げるなどして、直販に挑戦するところも現れてきた。「流通も含めたものづくり」といえば理想的な響きにも聞こえるが、実態はその多くが、余力のないなかで新たに不慣れな「売るための作業」を抱え、困難を感じつつ暗中模索している。
つまり、これまでは製造者と販売者が各々に役割を持って水平分業を保っていた業界構造の変化の影響が、職人さんたちの背中にダイレクトにのしかかっているのだ。日々ものづくりのことだけを突き詰めていくわけにもいかなくなり、多くの職人さんは経済的な事業継続性に頭を悩ませている。そしてこれは当然、次世代を担う後継者不足の問題にも影響を及ぼしている。













