洋画の上映が禁止されていた
ヴィヴィアン・リーの出演作では『哀愁』(1940)や『欲望という名の電車』(1951)も有名ですが、やっぱり『風と共に去りぬ』(1939)は外せません。
原作は大ベストセラーだったので、中学生時代に私も夢中で読み耽っていました。製作された1939年といえば第二次世界大戦が始まった年。当時は洋画の上映が禁止されていたし、1945年に終戦した後もなかなか日本に来なかったの。映画ファンの中には、待ちきれずに香港まで見に行った人もいたくらいでした。
1952年にやっと日本で公開されたとき、私は日比谷にあった有楽座に駆けつけました。原作は何遍も読み返していたけれど、アトランタの風景や南北戦争、南部のお金持ちの暮らしや南軍北軍の軍服なんかは、本で読むだけじゃイメージできないじゃない。だから初めて具現化された映画を見たときは感激しましたね。
当時は私も若かったから、ヴィヴィアン・リーが着るヒラヒラとしたドレスが本当にロマンティックで美しいと思ったし、憧れました。
彼女は当時無名の女優(そこが衝撃的!)だったけれど、あの演技力と美しさはものすごいインパクトで、本当に評判になりました。特にドラマティックだったのは、クラーク・ゲーブル演じるレット・バトラーが、ヴィヴィアン・リー演じるスカーレット・オハラを抱いて階段を上がっていくシーン。いい女優は他にもたくさんいましたけれど、ヴィヴィアン・リーは血の通った生身の女という感じ。今も記憶に突き刺さっています。