「ロードショー」がスターのサインを集めた理由
1972年創刊(5月号)、2008年休刊(10月号)。足かけ37年に及ぶ刊行期間中、映画誌「ロードショー」が蒐集・制作した資料や素材は数万点に及びます。それらは段ボール箱に詰められ、集英社の倉庫の片隅にひっそりと眠っていたのですが、今年3月に「集英社オンライン」の1コーナーとして、ウェブで「ロードショー」が復活し、14年ぶりに光の下へ。貴重な写真などが再活用に向けて取り出されました。
しかし、ウェブ版でもどうしても使い道が見出せなかったものがある。
それは…スターのサイン色紙です。山と積まれた箱を前に、編集部スタッフは首をひねりました。
価値はある…はず。
しかし、サインを見せるだけの記事なんてさすがに需要がないだろうし、系統も年代もバラバラに突っ込まれていて、整頓だけでも手が足りない。
そこへ若手のひとりがボソッと発言。
「鑑定団に出してみるとか、どうですかね」。
実はサイン色紙というのは、日本にしかないアイテム。平安の歌人たちが詠み歌を書き記したものが起源と言われています。海外ではみんなスターにサインを求めるとき、ノートなら上等、その辺にあるものやTシャツに書いてもらったりしているのです。
そんなわけで、昔はスターに取材の場で色紙を差し出すと、「何コレ」と問われたりすることも多かった(今もそうかも)。
しかし「ロードショー」は辛抱強く、あらゆる取材の場で、ときには海外にも持参したり特派記者に依頼したり、映画会社に頼み込んで、せっせとサインを集めたのでした。
だって「書は人なり」と言うじゃないですか。インターネットがなく、動画はおろか簡単に情報もサーチできなかった時代、スターの人となりを記事で伝えるのは容易ではなかった。しかし手書きのサインには、人柄がにじみます。メッセージやイラストを添えてくれたり、さすがは手慣れた流麗書体がある一方、あのハンサムがこんな丸文字をとほほえましかったり。
記事における文字と写真以外に、少しでも彼らの息吹を運ぶ手段として、サインは機能したのです。
そんな貴重なサインが陽の目を見るかもしれない。価値が証明されれば、展示なども企画できるかも! 色めき立った編集部はさっそく番組に依頼。とんとん拍子に話が進んで、1994年の放送開始以来、28年にわたって全国のお茶の間で愛されている『開運! なんでも鑑定団 秋の3時間半スペシャル!』(10月11日午後6時25分~/テレビ東京)で、わたくし編集長の杉原を出品人に、放送されることになったのです。