「僕は人の笑顔を栄養にして生きている」戸田奈津子が京都旅行をともにした、いまは亡きロビン・ウィリアムスとの思い出 _1

今でも亡くなったことが信じられない

映画のプロモーションでロビンが来日するたびに、一緒に京都旅行へずいぶん行きましたし、家族ぐるみでとても仲良くさせてもらいました。お寺でお坊さんがお経をあげる姿を見て咄嗟にモノマネをしたり、当意即妙で本当に人を笑わせる天才なの。

「吸血鬼は血を吸って生きるけど、僕は人の笑顔を栄養にして生きているんだよ」というのが彼の口癖。記者会見なんて入場料を取るべきだと思ったくらい、サービス精神旺盛な生まれながらのエンターテイナーでした。

実際の人柄の通り、演じる役もほとんど悪役ってないのよね。『ミセス・ダウト』(1993)みたいな楽しい役もやったし、『いまを生きる』(1989)や『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(1997)みたいな学生を教え導く教師役も、教訓めいていないところが彼にピッタリでした。

なかでも私が好きな1本は、テリー・ギリアム監督の『フィッシャー・キング』(1991)。ひと言では表現できない毛色の変わった不思議な映画でしたね。ロビン演じるパリーとジェフ・ブリッジス演じるジャックがセントラルパークですっぽんぽんになり、寝転がって歌を歌うシーンは忘れられません。背景にあるテーマはシリアスだけど、同時に秀逸な喜劇でもある。独特の世界観がギリアム監督ならではでした。

ロビンが2014年に亡くなってからもう10年。当時、彼の友人たちがサンフランシスコの劇場に集まって追悼会をしたのですが、私も参加させてもらいました。

いろんな人が追悼文を発表したのですが、なかでもギリアム監督の追悼文が涙をそそりました。今も亡くなったことは信じられないけれど、本当に誰からも愛される天才俳優でした。