実は知られていない本場のイタリア料理
本流とは違う料理でもきっちり丁寧に。そこからイタリア料理の奥深さが見えてくる――。
筆者も暗殺者のパスタをつくってみた。焼きそば、焼うどんの要領で簡単につくれそうだが、レシピ通り忠実に再現しようとするとなかなかテクニックがいる。
最初にパスタを焼く段階で、オリーブオイルとトマトピューレに触れた部分にじっくり火を通し、キャラメリゼされたように香ばしさを出すのが難しい。
焦げつくのを恐れて火力を弱めると締まりのない味になる。香ばしさを引き出そうと火力を強め過ぎればトマトの風味が損なわれ、パスタもぼろぼろになってしまう……。
「僕の動画を参考につくってくれた暗殺者のパスタの写真がSNSにたくさん投稿されていて、うれしいかぎりです。
料理をする楽しさを知ってもらえたら、次はシンプルな料理の中に込められたポイントを理解してもらいたいです。
ニンニクの切り方やおこげのつけ方、ソースの煮詰まり具合など、素材に敬意を払い、持ち味を最大限に活かすのがイタリア料理の神髄です。
このレシピをきっかけにイタリア料理に興味を持ってくれる人が増えてくれることを願っています」
すでに日本各地にイタリア料理店があり、アラビアータやカルボナーラといったパスタ料理は知れ渡っているような気もするが、マルコさんは言う。
「例えば、カルボナーラがだいたいどんな料理なのか日本のみなさんはイメージできると思います。
ただ、イタリアでは生クリームを使わないし、ベーコンでなくグアンチャーレ(豚頬肉の塩漬け)なんです。それは知らない人が多いと感じます。
暗殺者のパスタのブームは、イタリア人の料理人の僕にとって、伝統料理をみなさんに伝える絶好の機会ではないかと思っています。
興味を持ってくれたら、愛を込めてつくってみてください!」
取材・文/小林 悟
写真提供/マクリ・マルコ