小説、映画をきっかけにイタリアで知名度アップ
そもそもこの暗殺者のパスタ、イタリア半島の“ブーツのかかと”、プーリア州バーリにある「AL SORSO PREFERITO」というレストランが1960年代に提供したのが始まりだ。近隣には同じメニューを提供する店が10店ほどあるという。
マルコさんの生まれ故郷はすぐ隣、“ブーツのつまさき”カラブリア州だ。
「プーリアとカラブリアの料理はよく似ています。新鮮な魚介類に恵まれ、唐辛子やオリーブオイルをよく使うし、採れる野菜も同じようなもの」
暗殺者のパスタは現地では馴染み深いのだろうか。
「正直、イタリアで流行るまで知りませんでした。きっかけは、2005年発売のガブリエラ・ジェニーシという作家が書いた小説、その名も『Spaghetti all'Assassina(暗殺者のパスタ)』です。
サスペンスもので面白いと評判になり、イタリア国内でけっこう売れたんです。2021年には映画化もされました。
小説と映画作品の知名度が上がっていくとともにパスタ料理の暗殺者のパスタも有名になっていきました」
プーリア州の郷土料理がイタリア国内で今さら話題になるのは不思議な気もするが……。
「イタリアでは日本みたいに外食の選択肢も多くないし、コンビニも全然ありません。なので、基本的にみんな家で食事をします。
統一国家までの道のりも長かったので、他の地域の料理を食べる機会もあまりない。マンマ(母)がつくるのはその土地の素材を活かした伝統料理です。
暗殺者のパスタが、2000年代までイタリア内でもあまり知られてなかったのは、そうしたイタリアの歴史的、文化的背景があるからではないかと考えます」