居留地で日本人初の中華そば店を開業
「大貫本店」は、初代・千坂長治氏から、二代目・千坂吉郎氏、三代目・千坂哲郎氏、四代目・千坂創氏と親子四代に渡って受け継がれ、100年以上の歴史を繋いでいる。ここでいったん、時代は初代・長治さんが日本初の中華そば専門店として知られる浅草「来々軒」と出会った頃に遡ろう。
当時23歳だった長治さんは「来々軒」で食べた中華そばの味に感激し、神戸外国人居留地初の中華料理店「杏香楼」で中国人シェフの周氏から広東料理の足踏み製麺の技術を学び、中華そばのお店を開く準備を始める。
当時は居留地での商売が許可されていたのは外国人だけで、開業にあたってクレームが絶えなかったが、警察署長の説得に何とか成功し、当時の居留地で日本人初の中華そば店の開業を果たす。店名は「初心を『大』きく『貫』く」をモットーに「大貫(だいかん)」と名付けた。1912年のことだった。
戦後、現在の尼崎へ移転するも、四代に渡ってその味は受け継がれている。
四代目の創さんは語る。
「長い歴史を継ぐ中で、私の経験においてはやはり阪神大震災の時に一番大変な思いをしました。幸い、曾祖父から80年ほど継ぎ足してきた素ダレを失うことなく乗り切れたので胸を撫でおろしましたが、兵庫はとんでもない被害があり、知人もたくさん亡くなりましたので、素直に喜べる状況ではなく、再開に向けて進まなければならないことが本当に辛かったですね」(創さん)