#1 母からの虐待、女装してキャバ嬢、最愛の父の事故「家族がほしい」と望んだ理由は…
精子バンクで出産をカミングアウトした時、両親は…
男性・女性いずれの性にも合致しないと感じているXジェンダーの華京院さんにとって、妊娠中の身体の変化は耐えられないものだった。妊娠中は、自分の「女性」の部分を突きつけられる。違和感ではなく苦痛。だから妊娠中の約9か月間の記憶が鮮明ではない。
「身体の変化を自分で受け入れられないというか、もう、その部分を忘れています。覚えていたくないくらいの苦痛というか」
物理的、精神的困難を乗り超えて無事に出産した後、まず、母親が孫のいっちゃんに会いに病院に来た。
「母と最後に会ったのが、カミングアウトして喧嘩別れした25歳のときだったので、母のテンションも高くなかったんですけど、でも『かわいいわね』ってぼそっと言っていました。もっと貶されたり、攻撃的な言葉をかけられると思っていたので意外でした」
会話が成立しない状況ではあったが、父親もいっちゃんに会っている。
「その頃には父は認知症もあったんですけど、『赤ちゃんかわいい』と言ってたので、うれしかったですね」
いっちゃんが生まれて数年後に父親は他界した。母親には現在もたまに会いに行く。しかし基本、ワンオペ育児だ。気になるのは母親が精子提供のことを知っているかだ。幼少期からの家族の関係を考えると、全否定・大喧嘩となりそうな流れだが実際はまったく違った。
「精子バンクを利用したことは話しました。それに関して否定されたことはないです。母は若い頃、世間体を気にして結婚したので、男性と結婚したくてしたわけではないと思うんですね。なので、母も私と同じ時代に生きていたら、精子バンクを利用しての妊娠といった道を選んでいたかもしれません。そんな感じがうっすらしますね。いっちゃんが生まれて、母もすごく変わったなと思います」