「お父さんはどこなの?」と聞かれて…
いずれはいっちゃんにも、精子提供で誕生したことを伝えるつもりでいる。
「聞かれたときに答えようかなと思っています。AID(非配偶者間人工授精)のための絵本やレズビアンカップルの絵本があって、すでにそういったものを読み聞かせしています。とはいえ、あまり興味なさそうなんですけど。ただ、子供への告知は2歳から6歳までに完成させておいたほうがいいと聞くので」
現在6歳のいっちゃん。6歳ともなるといろいろと質問攻めにしてくることもある。
最近は、「お父さんはどこなの?」と聞いてきたそうだ。
「『お父さんはいないよ』って事実を伝えました。『そうなんだ』って。それしか言えないと思うんですけど。わかっているようでそうでないような。小さいうちから事実を伝えることが大事らしいので、私はそうしています。たとえ、すべてのことが理解できない年齢だとしても、事実を真摯に伝えるのが大事だと思っているので」
遺伝病の検査結果や、父方・母方それぞれの祖父・祖母の死亡理由、人種など、ドナーの情報は多岐にわたっていたが、華京院さんがドナーを探す際、一番にした条件が、いっちゃんが18歳になったときにコンタクトが取れる人だった。
いっちゃんがドナーを知りたいと思ったときに(出自を知る権利→遺伝的な親である提供者が誰かを知る権利)、メールや手紙を送ることができ、直接会えることもドナー次第だが可能な道を、何よりも優先させた。アメリカの精子バンクを利用したので、ドナーはアメリカ人になる。なので、地球儀でアメリカの場所を教えているという。
「それで覚えたみたいで『ここがアメリカの場所』と言っていますね。いっちゃんが『会いに行きたいんだけど』と言ってきたら、ドナー次第ですが、会いに行こうかと思っています。連絡はできても会うのがむずかしいようであれば、その町の雰囲気を見に行こうかと。私にとって精子提供は悪いことではなく、うしろ向きのことでもないので、前向きに捉えています」