一般的とされない家族
「そういう生き方も認めてもらいたい」
最たる焦点は、ドナー情報の開示範囲など「出自を知る権利」の保障についてになる。
華京院さんが気になるのが、現状のままだと精子提供による選択的シングルマザーやレズビアンの出産が、法整備によって、法律から外れた違法のもと生まれてくる人たちというレッテルを貼られる可能性があることだ。
なぜなら、精子提供・卵子提供は、法律婚の夫婦のみを想定して法整備が進められているからだ。一般社団法人「こどまっぷ」の代表理事・長村さと子さんはこう語る。
「法整備によってどう変わってしまうのか、現段階では予測できない部分が多いのですが、それでも子を望む当事者はいます。今以上に当事者が安全な医療から遠のくことがないよう、すべての女性が安全な医療を受けられるようになってほしいと思います」
生殖医療の進歩に、法律も、それを定める立場の人たちの意識も現実に追いついていない(もしくは追いつこうとしない)印象を受けるが、産みたいと願う女性の意思と安全が脅かされるようなことはあってはならないだろう。華京院さんはいう。
「シングル(選択的シングルマザー)や精子提供で出産する、そういう生き方も認めてもらいたいなと思います。それがたぶん難しいんでしょうけど。同性婚も、それをすることによって誰かが損をするわけではないことをわかってほしいです。きっと、わからないこと、得体のしれないものが怖いのかなという気がします。なので発信し、知ってもらうことによって、怖さがなくなっていけばいいなと思います」
メディアに出ると矢面に立たされる。性や生殖医療に関するテーマはタブー視される傾向があるからか、風当たりが強い場合もある。それでもなぜ取材に応じるのか。
それは伝えないことで、存在を無視され、マジョリティが当然のように享受している権利や制度も受けられず、窮屈な思いをして生きていくことにつながる恐れがあるからだ。
「私のような一般的とされない家族でも、メッセージを発していけばそれに賛同する人も出てきて、賛同者が増えていくと、その生き方ってたぶん認められてくると思うんです。なので私は、漫画のほうでそれをやっていきたいです」
自分と家族を守るための華京院さんの覚悟だ。