すべての子供は親のエゴから生まれた
ただ、一方で「精子提供での妊娠・出産は親のエゴでしかない」と言われるであろうこともわかっている。その上で華京院さんは、親として責任を持ってその道を選択し、いっちゃんは望まれて生まれてきた。
「『親のエゴで生んで』と言われるのはわかっています。でも、どんな子も親のエゴで生まれたと思います。恋愛をして結婚して子供をつくるのも親のエゴですし、不妊治療して生まれた子供も、できちゃった婚で生まれた子供も、どんな子も親のエゴの結果だと思います」
「子孫を残すために」「結婚したら子供をつくるのが普通だから」「好きな人との間に子供を授かりたいから」……。すべての子供は親のエゴから生まれたわけで、生まれ方に正しさや正解はないのかもしれない。
婚姻関係にある男女のもとに生まれ、形式上は伝統的家族にあっても、内側が崩壊している家族もある。大切なのは生まれ方や家族構成ではなく、華京院さんが漫画のあとがきに書いたように、その後、どうやって一緒に生きていくのか、だろう。
そしてその親子や家族関係に評価を出せるのは、そこで育てられた子供だけだと思う。責任を持たない周囲の声は、(内容にもよるが)子供の自尊心を損なわせ、子供を傷つけるだけだ。
「子供ができて自分は大きく変わったと思います。守るものができたことによって強くなった気がします。あとは視野が広がったというか視点が増えました。子供がほかの子と喧嘩をしたときに、子供は親の私からどう言ってもらいたいのかなと考えることとか。それはもちろん独身の頃にはなかったことで」
華京院さんは、面倒見のいい、お姉さんタイプないっちゃんを見て、精子提供で第2子を望んでいる。そう思い始めてすでに数年経つが、妊娠には至っていない。そうしているうちに「特定生殖補助医療等に関する法律案」(仮称)が法整備化されようとしている。