90年代の楽曲もほとんど実話から生まれた
【『Sing』の歌詞一部】(作詞:大黒摩季)
もしも神様がいるなら
どうして私だけの 大切なものを奪うの?
何をしたっていうの?
この体もこの心も 選ばせてくれもしないで
運命や性を背負って 生きていけというの?
――苦しくても歌い続ける理由に向き合って、できた曲だったんですね。
私、いつも「なんで私ばっかり」って思っていたんですよね。でも、出てきた歌にその答えがあって。結局、自分で選んだんじゃんって(笑)。うだつが上がらないバックコーラス時代、カッコ悪くて、実家にも帰れない20歳の誕生日の時、浅草寺に行ってね、「神様、私に、人間が感じるすべての感情をください」ってお願いしたんです。そのせいなんですよ、きっと。
――そこからすべてが始まったんですね!
自分で選んじゃったんです、20歳の時に。あの時、「私を幸せにしてください」ってお願いしておけばよかった(笑)。
ママが亡くなって1週間も経たないときに、宮崎でのイベントがあって。絶対、大黒摩季になれないって思ってたんですよね。ちっともポジティブじゃないし、ヒールすら履きたくない。「こんなボロボロでも、引きずり出されて歌わされるの? なんなのこの運命は?」って思ったんですけど、ステージが終わってみたら、笑ってましたからね。
結果的には、大黒摩季は、お客さんに喜んでもらえるなら、架空の人物でもいいんだって思いました。音が鳴れば歌うしかないし、始まったら、走るしかない。あの瞬間、お客さんに救われたなと思いました。
――ただ、お客さんの方も、大黒さんの歌にずっと救われていますよね。
私、お客さんのことをファンだとは思っていないんですね。支え合い、盛り立て合いながら生きてきた親戚みたいな感覚。だからライブでも距離が近いです。皆さんも、痛みや苦しみから救ってもらってる感じではないと思うんです。
共感して、気づいたら立ち上がってるみたいなことを、ありがとうと言ってくれてるんだと思う。私は本当にカリスマに向いてなくて、手をつないで一緒に行きましょうっていうほうが合っていて。
昔からそうです。『夏が来る』も、『別れましょう私から消えましょうあなたから』も実話だし、『あなただけ見つめてる』は、ああいうふうになったお友達を救いたくて書いたけど、『ら・ら・ら』も日記です。一番扱いにくい、その時の私を救うために私に向かって言ってることだから。それをみんなが「私もおんなじ!」って感じてくれてるんですよね。