インドで瞑想したビートルズ
3部構成、約8時間の長編ドキュメンタリー・シリーズ『ザ・ビートルズ: Get Back』がディズニープラスで独占配信されてから約1年になるが、一番盛り上がったのは配信開始直後と、第3部のラスト・ライブ・パフォーマンス『ルーフトップ・コンサート』が今年2月に5日間限定で劇場公開された時だろう。そして7月にはブルーレイとDVDの形でパッケージ化され一般発売。
この作品のオリジナルは1970年に公開された映画『レット・イット・ビー』である。しかしそれはまるで「ビートルズ解散のドキュメンタリー」のようにネガティヴな立ち位置で編集されており、暗く重苦しい内容だった。
その『レット・イット・ビー』を一から編集し直し、復刻したのが『ザ・ビートルズ: Get Back』だ。笑顔とユーモアに満ちたこの作品は、限定配信開始当時、大きな話題をさらったのである。ブルーレイ、DVDを発売してからしばらく時間が経ち、その話題も落ち着いてきたかに見えた。
しかしその様相が変わってきている。きっかけの一つが、ビートルズが67年に超越瞑想を学ぼうとインドを訪れた時の記録を辿った映画『ミーティング・ザ・ビートルズ・イン・インド』の公開(2022年9月23日から全国公開中)。
そしてもう一つが、彼らが転機を迎えた66年のアルバム『リボルバー』のスペシャル・エディション(新規ミックスや未発表音源多数)のリリース(同10月28日)だ。
『リボルバー』のレコーディングから、ルーフトップ・コンサートを行った時期、ビートルズは世界中を飛び回るコンサート活動を中止し、スタジオに籠って音の実験を重ねていった。
そこでバンドは音楽的に成長し、メンバー個々のパーソナリティが明確になり、皮肉にも解散へと突き進んでいく。そうした内部の実態が、約3年の間、彼らを映した一連の作品の中に、刻み込まれている。