『サイレント・ナイト』でキーラ・ナイトレイが見せた母性
大学時代の仲間とその家族が集って開かれたクリスマス・パーティ。ジョークを交わしながら思い出話に花を咲かせるさまは、楽しいクリスマス・パーティの幕開けだが……。
11月18日公開の映画『サイレント・ナイト』は、<クリスマスが、人類滅亡の日だった>という設定が衝撃。これまで<人類滅亡の日>を扱った作品はたくさんあるが、不確かな情報が錯綜するコロナ禍の現状を思えば、本作の鋭い視点と静かな警鐘は新鮮であり、より重く響く。
特に、地球に充満する謎の猛毒ガスによる“死に代えがたい苦痛”から逃れるために、息子たちに苦渋の選択を強いる母親ネルの“迷い”と“諦め”、“決断”は、見ているだけで胸が痛い。
そして、それは演じるキーラ・ナイトレイの演技力の見せどころだ。かわいい3人の息子と愛する夫に囲まれた幸せな笑顔。ふとしたときに見せる小さな不安の陰り。そして、末息子が投げかける“疑問”に常軌を逸する姿など、じつに細やかにして深い演技を見せている。
それは実生活で7歳と3歳の娘を持つ母親キーラだからこそのリアリティだと思うのだ。
イギリス人のキーラ・ナイトレイは、14歳のときに『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(1999)に出演。ナタリー・ポートマンが演じたアミダラ女王の影武者に扮して、ハリウッド・デビューを果たした。
とはいえ、ごくわずかなシーンにしか登場していないのだが、その知的な美少女ぶりは注目され、大ヒットシリーズとなる『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』(2003)への抜擢につながった。
しかも、日本ではその間に出演したイギリス映画『ベッカムに恋して』(2002)が『パイレーツ』と同じ2003年に公開されたこともあって、キーラ人気に火がついたのだ。