炎上を避けられた6つの理由

3話の訓練シーンが炎上を免れたのには、以下の理由がある。

1. 宙が訓練を考えたきっかけや理由が、武藤を心から思いやるものだった
2. 当初仲間たちは「そんなことをする理由がない」と訓練を断った
3. 武藤本人が、自身の成長のためにこの訓練方法を望んだ
4. 大事がないよう見張る役回りのキャラがいた
5. 訓練終了後、仲間全員から謝罪や労いの言葉があった
6. 宙本人から「この方法しか思いつかなかった」との言葉があった

該当のシーンでは、複数人で一人を取り囲み、代わるがわる暴言を投げつけている。センセーショナルであり、一見しただけでは意図を図りかねるとともに、誤解を生みやすい場面だ。

しかし、前述したように、このシーンによって不利益が生まれないような工夫がされていることがわかる。万が一にも現実で模倣されないよう、ドラマにとってこの演出が不可欠であると示しているのだ。

炎上リスクは至るところにある。あくまでドラマだから、物語だから、では通用しない時代だ。

リアルさや、ある意味での品性まで求められるようになったエンタメ業界において、炎上リスクさえも織り込みながらおもしろいドラマをつくる姿勢は、今後も必須となってくるだろう。

“おもしろいドラマを描くため”にあえて織り込む炎上リスク

本記事で取り上げた『テッパチ!』には、数々の若手男性役者が出演する側面からか、はたまたこのドラマの性質上の問題か、3話の訓練シーン以外にもヒヤッとさせられる場面があった。

たとえば、白石麻衣演じる桜間冬美自衛官と、宙との恋愛模様である。

男性が多く出演するなかで、紅一点とも言える冬美の存在には目を惹かれる。少々メタ的な見方になってしまうが、一人くらい女性キャラクターを入れておかなければ、恋愛に関する場面は描きにくい。そういった意味でも、彼女の存在はこのドラマに動きを与えている。

しかし、冬美と宙が互いに距離を近づけるエピソードがあまりにも唐突だと、視聴者としては疑問を感じざるを得ない。

冬美が車とぶつかりそうになり宙が助けるシーン、ならびに階段上から足を滑らせ転落する冬美を宙が助けるシーンなど、筆者のまわりでは「必要性に欠ける」といった声も聞かれる。

恋愛ドラマではない作品における恋愛描写には、ことさらに注意が必要かもしれない。「視聴者をキュンとさせよう」という狙いがあからさまな描写は、白けさせる結果となってしまうからだ。また、男性同士の友情や成長に重きを置いたドラマにおいて、恋愛描写はノイズとなる恐れもある。

くわえて、1〜2話ではサービスとしか言えないシャワーシーン&筋トレシーンの挿入も目立った。こちらも、好意的に受け取れる範囲を超えてしまうと、ドラマにとってのノイズとなってしまいかねない。

これらの”炎上リスク”は、何も『テッパチ!』に限ったことではない。いわゆるコンプライアンスを気にしすぎると、平坦でつまらないドラマになってしまうだろう。リスクを織り込んだうえで、どんなドラマが作れるか。受け手のリテラシーはもちろんのこと、作り手の覚悟も試される時代がきている。

文/北村有