増える日本不動産の外国人所有、その意外な理由とは…
「そう遠くない将来、都心部のタワマンのほとんどは、中国人のものになるかもしれない」
こう語るのは、ある外国人富裕層に詳しい税理士だ。
2024年、東京23区で売り出された新築マンションの平均価格は1億1000万円オーバーだった。2年連続の1億円超えで、「今のところ、好立地では値段が下がる要素は全くない」(不動産関係者)という。
この需要を支えているのが、円安を背景とした旺盛な外国人の投資にあることも間違いない。例えば、東京・中央区にある晴海フラッグの3割は居住実態が確認できず、その多くが中国人投資家の所有と言われる。
中国事情に詳しいジャーナリストの北上行夫氏が言う。
「中国人の不動産所有の6割は在日中国人と言われますが、残りの4割は中国本土や香港の投資家です。彼らはもちろん投資目的もありますが、最大の目的は資産保全です。とにかく海外に安全な資産を置いておきたい。日本は距離的に近く、賃料の利回りも中国本土よりよく、うってつけなのです」
しかし、日本の不動産を外国人が次々と所有していく理由はほかにもある。それが、外国の相続税や贈与税の問題だ。
実は相続税やそれに類する贈与税がない国がある。代表的なところでは、中国やインド、マレーシア、シンガポールやオーストラリアだ。アメリカは相続税があるが、基礎控除が15億円以上と事実上、ないに等しい。
言うまでもなく、相続税のない国の富裕層は世代を超えても資産は減らず、むしろ複利効果で増えていく。
その結果、日本の不動産市場に内外無差別で海外富裕層を受け入れてしまうと、3代で資産がほぼ無くなるほど高い相続税により、資産売却を迫られる日本人では勝負にならず、いずれは資産性の高い不動産は、特に海外資産を持ちたい中国人や相続税のない国に住む華僑を中心勢力とした海外富裕層の手に渡ってしまうというわけだ。
「もっとも、外国籍でも日本居住者であれば相続税は発生しますし、非居住者であっても日本国内にある不動産に相続が発生した場合は、その不動産のみを課税対象として相続税納税の義務があります。
ただ、海外法人名義の所有であった場合は、相続税は事実上、課税できません。個人名義であっても、非居住者の外国人が高齢になった段階で売却すればいい。
当然ですが、海外投資家は亡くなったタイミングで日本の不動産を所有していなければ、日本に相続税の納税義務はありません。相続税納税のため、不動産売却を迫られる日本人とは圧倒的に条件が違うのです。
相続税がない国は贈与税もないので、そのような国に住む海外投資家は、親が高齢になった段階で日本のタワマンを売って、その売却額を譲り受けた子が別の日本のタワマンを買うことができます。
このケースの場合、購入したタワマンが贈与税の課税対象になる可能性がありますが、海外在住の外国人に子のタワマンの購入代金が親のタワマン売却代金を充てた贈与であることの因果関係を国税が立証するのは難しい」(前出の税理士)
しかも、問題は相続税だけではない。