昨年、沖縄県の20代女性が、単身での引っ越し中に性被害に遭った。すぐに110番し、作業員の男は逮捕された。契約したのは業界大手の引っ越し業者だったが、地元紙の報道を見て女性は愕然とした。男の職業は「自営業」。記事の中に引っ越しの文字は一切なかった。

「引っ越し業界の闇だ」

後に判明したのは、思いも寄らない「委託の連鎖」だった。女性は新居に住めずに長期間、ホテル暮らしを続けた。押し倒されたベッドももう使えない。だが、男や業者側が提示した示談金はわずかで、責任逃れのような書類まで送りつけられた。果たして法的責任はどこまで追及できるのか―。

必死の抵抗、男が吐いた捨て台詞 

まずは事件に至る経緯を女性の証言や起訴状などを基に再現する。

比嘉レイさん(仮名)は職場まで1時間の沖縄市から、20分程度で通える浦添市内への引っ越しを決めた。希望に合う物件は4ヶ月間探してようやく見つけることができた。

管理会社が同じ場合に適用される割引もあり、大手の業者に決め、昨年9月、運送と洗濯機の設置契約を結んだ。「すべてこの業者に任せた」という認識だった。

10月。午前8時に始まった荷出しが終わると、作業員にこう言われた。「後で洗濯機の担当が来ます」。別の担当者なのだとこのとき初めて認識した。そして男から電話がかかってきた。「私が行きます」。

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その後、男は到着が遅れると告げてきた。レイさんは、仕事があるので早く来てほしい旨を伝えた。

ピンポンが鳴ったのは16時44分。現れた男が洗濯機のコンセントを差してホースを繋ぐ。「もともとクーラーの仕事をしている。汚れていないけど、今後、掃除の必要があったら呼んで」などと雑談しているうち、男の様子が変わった。

「彼氏いるの? 経験人数は?」。プライベートかつ性的な質問を繰り返され、適当な相づちでかわしていると、男はさらに意味不明な発言を繰り出した。

「俺とぎゅーっとしたらそういう気分になるよ」「チューしよう」

当然、レイさんは拒否した。すると、突然持ち上げられて設置されたばかりのベッドに放り出され、覆い被さられた。

男は身長180センチを超えるがっしりした体格で、一方のレイさんは150センチにも満たない。必死に抵抗した。男を蹴りながら片手で男の顔を押さえ、もう片方の手で自分の唇を守った。

「仕事で人が来る。早く帰って。きもい」と言っても、男は「いいじゃん」と食い下がる。それでも「人が来る」と言い続けると、男はようやく諦め、こんな捨て台詞を吐いて立ち去った。

「また来るね」

パニックに陥ったレイさんは震える声で警察に通報した。