心霊現象の積み重ねで魅せる古典ホラー

『たたり』(1963)The Haunting 上映時間:1時間52分/アメリカ
米国の作家シャーリイ・ジャクスンによるお化け屋敷小説の最高峰『山荘綺談』を、『ウエスト・サイド物語』(1961)や『サウンド・オブ・ミュージック』(1965)等で知られる名監督ロバート・ワイズが映画化したモノクロのホラー映画の古典。

お化け屋敷として名高い丘の上の古い館に、心霊現象を研究する博士が、霊感の強い女性ふたり、のちにその屋敷を相続する青年とともに泊まり込む。その夜、屋敷では不可解な出来事が起きる。

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Album/アフロ
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怖いのはその心霊現象の数々。ラップ音が鳴り、丈夫そうなドアがギギギと音を立ててたわみ、何者かの荒い息遣いが聞こえてくる。部屋も廊下もパースがズレたような不安定さで、螺旋階段の上の暗闇のヤバさといったら! そこには絶対、見えない何かがいると思わせる演出の連続なのだ。『死霊のはらわた』シリーズ等で知られるホラーのマエストロ、サム・ライミ監督が、人生でもっとも怖かった映画の1本として本作を挙げているのも納得。派手なこけおどしや映像技術ではなく、そういった演出の積み重ねで怖がらせてくれるからだろう。だからこそ、ホラー映画の古典なのである。

ちなみに本作は『ホーンティング』(1999)というタイトルでリメイクされ、Netflixのドラマシリーズ『ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス』(2018)も作られた。後者のTVシリーズもクオリティは高いのだが、やはりもっとも怖いのはこのオリジナルである。


文/渡辺麻紀