その後の映画に影響を与えたキューブリック演出
『シャイニング』(1980)The Shining 上映時間:1時間59分/アメリカ
ホラー映画を語るならやはり、モダンホラーの王様、スティーヴン・キングの小説から1本、入れなくてはいけないだろう。最近では大ヒットした『IT/イット”それ“が見えたら、終わり。』(2017)等もあるが、今回チョイスしたのはスタンリー・キューブリック監督の『シャイニング』。いわゆるお化け屋敷もの&超能力ものを合体させたホラー小説なのだが、キューブリックはそのふたつの特徴を控え目にして、サイコサスペンス的な映画にしてしまった。雪に閉ざされた山のホテルで徐々に常軌を逸していく作家の、その狂気で満たされた心にスポットを当てたのだ。その意味ではつまり、ジャンルが変わってしまったことになるのだが、ホラー的な演出は素晴らしい。
水色のドレスを着た双子の少女、エレベーターホールから噴き出る血、少年が乗った三輪車が廊下を走る音、237号室のバスタブからにじり出る裸の女性、そして、小説を書くはずのタイプ紙に延々と印字された同じ言葉! お化け屋敷の表現としても、心が錯乱してしまった表現としてもメチャクチャ恐ろしい! 後年、本作のこういう描写が『トイ・ストーリー』シリーズをはじめ、さまざまな映画で流用されているのはやはり、強烈なインパクトがあったからだ。
本作を気にいっていなかった原作者のキングは、1997年に自らが製作総指揮、脚本、さらにはカメオ出演までしてTVのミニシリーズを作ったが、原作に忠実なだけで面白くはなかった。やはりキューブリック版が最恐だ。