岐阜ならではの地形から生まれた伝統のカツ丼

この店の暖簾にある「元祖みそかつ」の由来は、初代がカツをどて煮に落としてしまい、食べてみると意外と旨かった――。という偶然からスタートしている。その後、試行錯誤を重ねて開発した味噌カツが評判となった。現在は3代目が「祖父の味を守ること」をモットーとして「一楽」ののれんを守り続けているという。

3代目が暖簾を守る創業60年を超える老舗
3代目が暖簾を守る創業60年を超える老舗
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今回#1と併せて紹介した岐阜のカツ丼5種は、①あんかけ ②粘度の高いソース(かけ)+千切りキャベツ ③さらりとしたソース(漬け)+落とし卵 ④エスプーマ ⑤卵とじ味噌ダレがけ……。3エリア、5軒のカツ丼はどれも異彩を放っている。このほか、岐阜県内には東濃の中津川や恵那、その他の地域にもまた違うカツ丼がある。

東西に走る中山道のほか、北陸に抜ける美濃街道や白川街道、北国街道、そして伊勢へとつながる伊勢街道など、様々なルートで流入した食文化と各店舗の創意工夫で少しずつで岐阜のカツ丼は形成されてきた。

現在、岐阜県でカツ丼を提供する店の多くは、1970年の「外食元年」よりも遥か前から地域の人の胃袋を支え続けた存在だった。情報の流速ががのどかだった時代に導入された文化は固定化されやすい。街道沿いを中心に広く集落が点在した岐阜では、カツ丼はそれぞれの形を保ち、今もそれぞれの町と店で異彩を放ち続けている。

#1 あんかけ、てりかつ…多様すぎる岐阜カツ丼の謎

文・撮影/松浦達也