ちあきなおみにカヴァーされた『黄昏のビギン』

1969年を最後に、永六輔が作詞家という肩書を外したのは、自作自演の若い歌手が登場して来る時代を見越していたからだった。それから5年が経って、予想したとおりにシンガー・ソングライターの時代がやって来た。

永六輔は当時、作曲家の中村八大と二人でチャリティーのために「99円コンサート」を開いて、全国行脚することにしていた。それを始めるにあたって中村八大から、これからの社会と時代に向けて、大人のメッセージ・ソングを作ることが提案された。

そこで永六輔は再び、『生きているということは』『生きるものの歌』などの作詞を手がけた。いつかは訪れる死を意識して生を語るという単刀直入な歌が、こうして生まれたのだった。

しかもライヴでの評判が上々だったことから、1974年に40歳にして歌手デビューすることになった。

発売時に東芝EMIが打ち出した宣伝のキャッチコピーは、「五木寛之いわく“まさに説教節! 二十年の歳月をかけて、名人・中村八大が育てあげた手づくりの歌手、永六輔の絶唱!」というものだ。

だが、前評判や気迫が必ずしもヒットと結びつくものではない。6月に発売になった『生きているということは』は、プロモーション活動が熱心に行われたにもかかわらず、残念ながら目標とした数字には届かなかった。

この歌はそれから20数年間、ほとんど忘れられた状態にあったと言ってもいい。ところが2013年の秋になって、NHKの若いディレクターによって発見された。

そして歌にふさわしい声とキャリアを持ったベテラン・シンガーの上條恒彦が、テレビの番組のなかで歌ったところ、視聴者からの反響を受けてCD化されることになった。

永六輔と中村八大のコンビによって作られた数々の歌の中には、『黄昏のビギン』(歌/水原弘)のように、1959年にレコードが発売されてから約30年間も埋もれていたにもかかわらず、ちあきなおみのカヴァーによってあざやかに蘇った名曲もある。

『ちあきなおみ 全曲集 ~黄昏のビギン~』(テイチクエンタテイメント)2002年10月23日発売 『喝采』『矢切の渡し』など往年の名曲が収録されている
『ちあきなおみ 全曲集 ~黄昏のビギン~』(テイチクエンタテイメント)2002年10月23日発売 『喝采』『矢切の渡し』など往年の名曲が収録されている
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本当に死ぬまでは、どんな歌も生きている。歌を生かすのも殺すのも、聴き手にかかっているのだ。 

文/佐藤剛 編集/TAP the POP