経済的負担から治療を諦める人たちは既にいる
西村 不妊治療や産婦人科でも、「お金がかかるんだったらもう治療をやめようか」という声は実際にお聞きになることはありますか?
宋 不妊治療の場合は多いですよ。当然ですけど、誰しも限りある家計をやりくりして治療費を捻出していて、しかも比較的若い世代が多いから経済的な余裕もありません。だから、タイミング法や2~3万円の人工授精はできても、さらにお金がかかる対外受精までは無理、という人は少なくないし、私たち産婦人科医は、医療費がかかるから諦める、という事例にごく当たり前に接しています。
たとえばピルでも、「この薬だと生理の頻度が減ってより快適ですよ。でもジェネリックがありません」というと、「じゃあ、毎月生理が来ちゃうけどジェネリックの500円前後のほうでいいです」とか。自分の体のためとはいえ、何千円にもならない差で治療法を選ぶ人も少なくないので、出せるお金は有限なんだな、といつも痛感しています。
西村 数百円のオーダーでもそういう選択になるのに、ましてや数万円とか数十万円の治療になると当然……。
宋 もうめちゃめちゃおっしゃるとおりですよ。産科や婦人科って患者さんがほぼ現役世代なので、産みたい人は産んで産みたくない人はちゃんと避妊をできて、生理や女性特有のがんにも患わされずに現役世代を生きていってほしいし、そんな若い世代の人たちに払えないものが増えてしまうことには、すごく憤りを感じますね。
先日やっと日本でも薬局で買えるようになったアフターピルなどもそうですが、セクシャルリプロダクティブヘルスライツという女性の体の自己決定権では、ただでさえ当事者に負担がかかっていることが多いのに、さらに高額療養費制度で不妊治療に手が届かなくなったりすると「値上げしている場合じゃないだろ!!」とつくづく思います。
西村 本当に「政府と厚労省のやろうとしていることはひどいですね、」と言い合っているだけでいくらでも時間が経ってしまうんですけれども(笑)、あれもこれも言わなければいけないことだらけだから、どれだけ指摘してもキリがないですね。
宋 今日の対談の締めくくりとして、最後に「厚労省や政治家には人としての良心がないのか!?」と言いたいですね。だって、あなたたちだっていつ病気になるかわからないんですから。
西村 ホントですよね。これはいつも思うことですが、厚労省の保険局の人たちは皆、付加給付も傷病手当金もない国保で非正規待遇、という不安定な就業環境で仕事をしてみれば、高額療養費制度にしても産科の将来方針にしても、制度設計のしかたが少しはマシになるんじゃないかと思います。













