示されない「グランドデザイン」
西村 現場の医療者が皺寄せを一手に引き受けている状態もおそらく限界に来ていて、救急医療の受け入れが崩壊寸前だという話も見聞きするようになりましたよね。
宋 最近では、初期研修を終えただけで医療経験も技術も未熟な若手医師が、報酬が高くて当直もない美容整形へ直接行ってしまう「直美」が増えて問題視されていますよね。あの人たちの将来のキャリアはヤバいだろうな、と思うけれども、その反面で、医療を支えるために身を粉にして働いて、薄給で365日24時間の勤務体制に加わるかというと、「そういうキツいことはしたくないよね」と考えてしまう気持ちもわからないではないです。
西村 グランドデザインを示さない、と先ほどおっしゃいましたが、一事が万事そうなんでしょうね。
宋 全体としての医療費をどうしたいのかということが何も見えないまま、「はい、高額療養費制度を削りま~す」みたいなことをやっているように見えてしまうんです。医療費全体は何十兆円もあるのに、これで抑制できる金額ってせいぜい2000億円とかそういうレベルの話じゃないですか。
西村 しかも、予算委員会や厚生労働委員会での上野厚労大臣の説明だと、「何千億というスケールの話でも、ひとりあたりの保険料抑制額を計算すると百数十円になってしまうことはご理解ください」と言うんですよ。「いやいや、そこを減らしてくれなんて最初から誰も言ってないでしょ」ということがまったく彼らには通じないんですよね。
宋 むしろ国民に説明するのであれば、「ひとりあたり100円少々の負担をしていただくことで現在の高額療養費制度が成り立っています。存続にご協力と理解をお願いします」というべきですよね。
西村 そうですよね。超高額薬剤が増えている、ということも彼らは言うけれども、高額薬剤が国民医療費の圧迫要因ではないことは様々な論文でも指摘されています。要するにたとえ単価が高くてもそれを何人の患者がどのくらいの期間使うのか、ということを考えると、総額では決して大きな金額にはならないわけですよね。しかも、「それで助かる命があるのなら、ひとり数百円程度の保険料負担くらい全然構わない」という意見が多数を占めるだろうと思います。
宋 だって、「保険料を100円安くしてほしいから高所得者がもっと負担しろ」みたいな意見も全然見かけないですよね。
西村 厚労省も上野厚労大臣も「皆さんの保険料を安くします」と言っているんですが、「そのために、なぜ一番最初に高額療養費に手をつけるんですか?」「それは順番がおかしいでしょ」と最初からずっと指摘されているにもかかわらず、「保険料がお安くなります」と判で押したようなことばかり繰り返すんですよ。
宋 回答になっていないですよね。













