「金太郎、突破する。」(集英社文庫・コミック版8巻収録)
ヤクザ問題を解決すると豪語する金太郎
『サラリーマン金太郎』第74話では、金太郎の熱さそのものより、それを受け止める大人の側の言葉に注目したい。
全日本競馬会(ARA)の副理事長・白井は、金太郎たちの事業計画に興味を示しながらも、最大の壁としてヤクザの問題を突きつける。住民運動、警察の消極姿勢、利権をめぐる暴力団の介入――現実を見れば、簡単に乗れる話ではない。
この言葉を聞けば、多くの人はそこで話が終わったと思うだろう。ARA側の社員たちも、金太郎の部下たちも、そう受け取った。
だが、ただ一人、まだ目の光が消えていない男がいる。金太郎だ。「ヤクザの問題をクリアすればいいわけですか?」「やりますよ」と言い切る。あまりにも無茶で、部下の早田ですら止めに入るほどだ。
だが、そんな金太郎を見た白井は、ある考えに及ぶ。
ARA社員が「どんなにやる気があろうとヤクザを抑えることなどできるわけがありませんよ。バカバカしい」と金太郎の提案を切り捨てると、白井はこう言う。
「あなた方にあのお返事ができますか?」「できないと最初から思っているあなたより可能性はある。あの子がやりたがっている夢の向こう側に我々がいてやれるんなら、いてやろうじゃないか」と。
できるかどうかはまだ分からない。普通に考えれば無理に近い。だが、それでも最初から「できない」と決める人間より、「やる」と言い切る人間のほうに可能性を見る。その可能性に、白井は賭けてみようとしている。
若い人間の無茶を鼻で笑うのではなく、その先に立つ。その姿勢は、立場のある人間にしかできないことでもある。
若手が活躍できるかどうかは、本人の熱意や能力だけでは決まらない。それを受け止める側に、どれだけの器があるか。人の上に立つものこそ、この白井の言葉を胸に刻んでおきたい。























