高市首相も「疾患当事者」であるものの…
宋 厚労省の人たちは、「手をつける場所は本当はここじゃないんだよな……」って考えないのかな。自民党の中にだって良心がある人もそれなりにいるでしょうけれども、この予算案で自己負担上限額の引き上げが決まっちゃったら覆せるものなのか。結構ヤバいんじゃないかなと思うんですけど。
西村 限度額も含めて高額療養費に関するいろいろなものごとは「政令で定める」と健康保険法で決まっているので、政令である以上は、理屈の上では閣議決定で決めることができます。だからといって、彼らが閣議決定で「じゃあ、高額療養費の自己負担上限額を下げまーす」って言うかというと、そうするとは考えにくいですけれども。
宋 思えないですよね。
西村 とにかく、患者団体の尽力で年間上限の新設と多数回該当の据え置きを達成したのは大きい成果ですが、国会の質疑で上野厚労大臣はそれだけを前面に押し出して、一ヶ月あたりの限度額上昇や病気で収入が減少した場合の負担の重さには全く触れようとしないんですよね。
宋 だって一番上の所得区分が約34万円でしたっけ? 「年収1650万円稼いでいる人なら月にそれくらい払えるやろ?」と考えているのかもしれませんが、そんなの絶対に無理ですから。
西村 家庭によって子育てや家のローンや親の介護など、いろんな事情がありますからね。国会の質疑でも、多数回該当を据え置きにしていることを錦の御旗のように掲げるんですけど、その多数回該当が適用されるためには、まず直近12ヶ月で3回通常の上限額を払わなきゃいけないわけですよね。34万円を3ヶ月続けて支払うことに耐えられますか、という話なんですよね。
宋 これってよく「民間保険を儲けさせるためだ」みたいなことも聞くんですが、どうなんですか?
西村 公的医療保険と同じ水準の給付をカバーするものを民間保険で商品として設計できるかというと、「いや、とてもじゃないけど無理です。毎月あたりの支払い額がものすごく高くなります」という話は聞いたことがあります。
宋 やはり皆で声を上げて少しでもマシな案にするか、あるいは凍結をしてほしいですよね。
西村 高市さん自身も難病患者ですからね。関節リウマチで生物製剤の投与もしていて、僕の場合はレミケードですけれども彼女はおそらくアクテムラだと思うんですよね。しかも、人工関節に置換していることも公表しています。人工関節の置換術は議員生活のどこかの段階で行ったのだと思いますが、彼女の政治姿勢に対する賛否はともかくとしても、この疾患を抱えて政治活動を続けてきたのだから、相当な努力家であることは間違いないでしょう。
でも、そういう疾患当事者だからこそ、比喩ではない文字どおりの患者の痛みや苦しみをあなたなら理解できるはずでしょう、と思うんですよ。
宋 政治家は、自分がその立場にない場合でも当事者のことを想像して政治をしてほしいと思うんですが、自分自身が当事者なのにそこを無視してしまうとすると、辛いですよね。
西村 たとえば、支払い金額を上げると受診を抑制する人が出てくる可能性があります。この制度を利用する人が受診を控えるのは、生き続けることを諦めるという意味でもあるわけで、当事者ならその重大さがよくわかるはずなんですが。
宋 本の中にも書かれていましたし、SNSでもそういう体験談がありますよね。













