100人を超える人たちへインタビュー
須賀川 ご著書、一気に読みました。中村哲という人物は、自分の中である種、神格化されていたんですね。彼の言葉や行動は、常人ができることでは決してないし、自己満足でできるものでもない。でもこの本を読んで、「あ、この人もやっぱり人間だったんだ。こういう感情を持っていた人なんだ」とすごくよくわかりました。アフガニスタンになぜあそこまで情熱をたぎらせていたのか、その源流に触れられた感じがします。
山岡 ありがとうございます。中村哲を書きたいという思いはかなり前からありました。2002年に長野県にある佐久総合病院で、中村さんが若月賞という、医療貢献者に与えられる賞を受賞されたタイミングで、ご本人に会いに行こうと思ったのですが、その時はすれちがいになってしまい、会えませんでした。
その次にお会いするチャンスができたのはずっと後の2019年6月です。ペシャワール会(中村哲氏の医療活動を支援する目的で結成されたNGO)の会長に別件で取材する機会があり、「ぜひ中村医師に取材させてください」とお願いしたのですが、その半年後の12月4日に、中村さんはアフガニスタンで武装集団に襲われ、亡くなられたんです。
須賀川 そうだったんですね。ぼくも結局、中村先生とは会えずじまいでした。
山岡 その後すぐ、新型コロナが流行しましたよね。私はもともと医療の分野を取材してきたものですから、コロナ禍における医療現場もずいぶん取材しました。すると医療現場の最前線でとんでもない状況が起きていることがわかる。例えば高齢者が孤立して暮らしているところになかなか医療が届かないとか、中小の病院や診療所がコロナの患者を受け入れないといった問題があちこちで起きていました。
そうした取材を重ねているうちに、医療とはなんだろう、医師とはなんだろうと思うようになり、その時に再び中村さんのことが気になってきたわけです。あの人は医師だった。しかもその枠を超え、あれだけの事業をやってのけた。よし、中村さんの取材をしよう、と決めました。本人はもういないけれど、彼といっしょに活動していた人たちを取材することによって、中村さんが書きたくても書けなかったようなこともつかめるのではないか、とペシャワール会を中心に、100人を超える人たちにインタビューをしてまとめたのがこの本です。
須賀川 ドキュメンタリーを撮る際には対象ご本人に迫るのももちろん大事ですが、まわりの証言を積み重ねることで、実は本人すら知らなかった素顔が見えてくることがあるじゃないですか。この本がまさにそうで、中村先生だけを見ていたらわからない面が、まわりの人たちと先生との人間関係を追うことで見えてくるんだと思います。















